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偶然と必然―現代生物学の思想的な問いかけ

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偶然と必然―現代生物学の思想的な問いかけの商品レビュー

5.0 偶然とシンクロニシティーからフェルメールへ
偶然と必然がいかに生物と関わるかにおいて、本書はとても参考になる。本書を読んだ後、「宇宙に開かれた光の劇場」上野和男・著を読むことをお薦めする。もちろん、手前味噌ではあるが。応用編になる。富山湾の滑川でのホタルイカの光の集合と、魚津の蜃気楼、はたしてこの二つの現象は偶然か必然かという問題がある。相互になんの関係もない独立の現象か?もうひとつ、これは生物というより文化なのだが、同じ富山湾に面する宇出津の光の祭典・キリコ祭りも偶然にふくまれるのか?後者の本で著者は、こうした一連の能登を含めた富山湾周辺の光の偶然をフェルメールまで延長させている。あの17世紀のオランダの光の魔術師である。日本とフェルメールをつなぐ偶然を、著者は鈴木春信の絵に見出す。「紳士とワインを飲む女」の椅子の上の楽器・シタールの裏に映り込んだ光と、春信画の「鏡台の秋月」における鏡台裏のあり様、ここに無意識の偶然がある。「宇宙に・・」の本の表紙の帯の両端に紹介された部分画に注目。偶然の話をもとにもどせば、ホタルイカはニューメキシコ州・ソコロにある27基の電波・天体望遠鏡の目的性との一致の可能性を指摘している。もっと言えば、偶然・必然だけでなく、C.ホイヘンスの光の波動性と粒子性の議論にフェルメールがシンクロニシティー(同時性)として感応していると著者は言っているのだ。
5.0 この世界における「偶然」の意味
生命の本質、進化の本質を論じた本。


まず、無生物と比べた生物の特徴として、内発的構造形成、合目的性、不変性が挙げられる。

不変性は、一見熱力学第二法則と矛盾しているように思える。
第二法則によると、秩序は失われる方向にしか動かないからだ。
したがって、秩序立てられた生物の体は維持し得ないように思える。
しかし、第二法則はあくまでも孤立系のみだから、外から秩序=食物を補給していれば大丈夫だ。

また、合目的性は、生物の複雑で能率的な機構を見ると疑いようもない。
しかし、これは科学の前提である客観性の原理、現象は究極目的を持っておりそれに向かって働くという考えを退ける原理、に反している。

さて、不変性と合目的性は以下のような位置づけになる。
まず、不変性は遺伝子の複製能力による。
一方、自然淘汰のメカニズムにより進化が起こり、分子の持つ機構はますます洗練されていく。
これを、分子が合目的性を有しているように錯覚させるのだ。

複製と自然淘汰の間には突然変異が入っている。
そしてこの突然変異は完璧に偶然の所産なのだ。

したがって、今の人類があるのは、偶然的な突然変異を、必然的な自然淘汰と複製のプログラムによって広め維持したことによるのだ。
かくして、宇宙には目的などないのだ。

この、目的がないという事実を認められない人が、宗教に走ったり、ヘーゲルやマルクスのような歴史の発展法則を作ってしまう。
しかし、目的がないという現実に向き合ってこそ、初めて人類の道は開けるのだ。



全体としては、思想の方向はニーチェに近いような気がする。

その世界の無目的性、冷酷な現実との対峙を求めるのは、まさしく「超人」のなす業だろう。

2.0 肉食系生物学者?
分子生物学者が自分の過激な思想を一般の人々に向けて述べたものである。
その根底を流れる考え方は、神をも認めない人間(白人)至上主義であり、
反論・反感をあおられたが、それが幸いして退屈せずに読むことができた。
これが世界をリードする人々に今なお潜在する思想なのだろうか。
5.0 興味深い論考
 オペロン説で分子生物サイバネティクスとも言うべき分野を開拓したノーベル賞ウィナーであるモノー博士の生命論。生物と非生物の境界から議論を開始し、生命のシステム的本質をマクロの合目的性とミクロの偶然性の関係に絞りこんでいく。一方で近年の(当時の)分子生物学の成果を解説するなかでタンパク質の立体構造にこそ生命の物質的本質が隠されていると断じる。そしてこの2点を軸に進化、言語、中枢神経系と思考、現代社会と人間の進化について独自の論考をすすめていく。
 個人的には、システム論として読む上では非常に興味深い考察であると思われたが、生命システムの下部構造を律していると思われる非平衡系における熱力学、統計力学、または複雑系理論などの視点から本書を見直せば、新しい発見もあるであろうし、また批判的読み方も可能であると思われた。様々なテーマ、疑問を提起してくれる優れて得がたい論考である。
特に進化に関しては、カウフマン、人工生命系の研究者、ドーキンス、ローレンツ、ダイソン、アイゲンなどの考え方と比較してみると興味深い。
5.0 歴史に残る1冊
さすがに30年たった現在、この本から得られる新しい知識は少ないだろう。しかし、「複雑な生命現象に如何に理論的に切り込んで行くか?」、と言った問題は昔も今も共通である。
したがって、この本は何回読み直しても新鮮さを感じる。
物理や物理化学など、理論的な分野が得意な人にこの本を読んで欲しい。きっと生物学に興味をもつようになるだろう。

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