「情報行動」という社会学的なアプローチを提唱
障害者を含めて誰もが情報にアクセスできるようになる情報アクセシビリティを実現するために、この本では、福祉工学的なアプローチだけでなく、「情報行動」という社会学的なアプローチで取り組むことを提唱している。「情報行動」というのは、耳慣れない言葉だが、このアプローチは、何かをしたいとき、どのような情報を入手や発信したいのか、入手や発信にどのような障害があるかを順を追って分析してしていくというものである。本書では遊園地に行くという例をとりあげているが、遊園地を決める段階、交通手段を選ぶ段階、現地で集合するという段階、遊園地まで歩くという段階、非常に多くの障害入手があることが分かる。結果的に利用者の視点に立つため、実際的な解決に役立つように思う。
その他、情報アクセシビリティを実現する各種技術や世界の動向に概説した章もあり、これも役にたつ(特に、米国の政府は、障害者に配慮した製品しか購入できなくなったため、多くの製品が障害者に配慮されるようになったというのは、彼我の差を感じた)。
最後の方に、「われわれは、二十一世紀のロビンソンだ」という表現が出てくるが、高度情報社会が到来した今日、かえって情報の交流に阻害されているのは、障害者だけでないと、本書全体を通じて感じた。
分かりやすく書いたための欠点だが、若干冗長度が高い。繰り返しの部分を省いたり、ロビンソンクルーソーの部分などは簡潔にして、より薄い本にした方が読みやすかったと思う。
基本を押さえた非常に良くできたガイド本だ
複数の著者による編集本だが、非常に良くまとまったガイド本という印象を受けた。全体のテーマとしては「IT社会でのロビンソン・クルーソーをなくそう」というものがあり、実例として「遊園地に行こう」というタイトルでユニバーサルデザインの対象を洗い出し、そこから「情報行動」という概念を導いて障害者と子供や高齢者の行動に対する同一性を説明するあたりは非常に明快だ。
次にサポート機器や技術の解説を行い、各国事情を説明した上で、未来でのユニバーサルデザインの有り様を描くところなど、話の運びや表現の仕方は類書にないセンスの良さが感じられる。
エピローグで、活字まで小さくして盛りだくさんで課題をたくさん投げかけているところはちょっと編者の目算が外れたようだが、各章末にはまとめやブックリストもあったりと、基本を押さえた非常に良くできたガイド本だと思う。
個人的には全体的に箇条書き箇所が少ないのが、読みにくい感じがしたが、それも一長一短がありそうなのであえて欠点とは言えないだろう。それよりも軽装本であり、このボリュームにしては値段が高いというのがやや気にはなった。