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街場のアメリカ論    NTT出版ライブラリーレゾナント017

街場のアメリカ論 NTT出版ライブラリーレゾナント017

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街場のアメリカ論 NTT出版ライブラリーレゾナント017の商品レビュー

5.0 アメリカばかりが「外国」ではない〜アタリマエなんだけどね
日本は戦後、外交を含んだ政治的側面のみならず
『ナショナル・アイデンティティ』そのものを、アメリカを真似る、あるいは相対化して見る、ということで築いてきた、ということを様々な側面からアプローチしたもの。
そしてその『アメリカ』風の価値観ないしは歴史観のあれれ?な部分をトクヴィルの著書を多々借用しながら解説していく。

ただそれにしても(面白く)気になったのは、現在のパックス・アメリカーナを崩すものが反ユダヤ主義ではないか、という議論。
それから今や同盟的友好国となったかつてのカタキであるロシアとアメリカとのおそろしいまでの歴史的共通点(そこにもユダヤ人がからむ)。
確かにアメリカ=外国という錯覚のもとに暮らしているのは事実であり、しらずとその価値観に染まってはいるのだろうけれど、それがまあここまで歪み切ったものだとは知らなんだ…。

面白がりながら反省できる本でありまする。
3.0 あったかあらぬかしらねど、あったものとして聞かねばならぬ
 以前に『街場の中国論』を読んで面白かったので、遅まきながら、気になっていた本書を読んでみた。面白いことは面白い。
 ただし、「どんな偉い人が言ったことでもそれは『真実』ではありません。(中略)この本の中で私が『その原因は……』と言い出したら(何度でもやりますよ)、すぐに眉につばをつけてくださいね」(p35)と自分で書くのは、p166から触れられているダブル・バインド的コミュニケーションの一種でズルイと思う。あるいは、「さあ皆さん、タネも仕掛けもありますよ。見抜けますか?」みたいな、奇術を観る楽しみにも似てる。口上自体、読者を判断停止に追い込むフェイントの可能性もある。
 『中国論』もそうだったけど、やはり精神分析的な手法で国家や社会を扱うってのは、かなり危うい感じがする。見やすいところで言えば、「アメリカ人の肥満」を論じた件り。ウチダ先生はこれを「わかりやすい記号表現」を用いた低所得層の「階級的怒りの表明」だと言うんだけど(p201)、う〜ん。「階級」なんて用語を持ち出すわりにはエンターテインメントとして消費するしかないような議論で、『デブの帝国』とか『ルポ 貧困大国アメリカ』とかの分析の方にやっぱり軍配を上げたい。
 それから最近『橋本治と内田樹』という対談本が出てて(ただし未読)、確かに内田の論の振り回し方って時にすご〜くハシモト的。たとえばp115辺りの文章の展開って、ハシモトっぽくありません?
 あと、p61で「プリゴジーヌの『バタフライ効果』」について薀蓄垂れてますが、「バタフライ効果」ってローレンツでしょ? ま、混同する気持ちは分かるけど。
4.0 事実誤認もご愛嬌―ウチダ式アメリカ講座

支障のない範囲だとは思いますが、アメリカ史に関わる記述に
事実誤認が散見されました。そこは残念だったけれど、名文家
の著者のこと、そんなのはご愛嬌のレベルかもしれません。

でも、ひとつ不可解だったのは、かのトクヴィルを猛烈に意識
して本書を著しているのに、言及されるトクヴィルの著作は、
中央公論社(世界の名著)の抄訳版(講談社学術文庫に3巻の
全訳版あり)。アレレっと思いました。

もちろんフランス思想がご専門の著者のこと、ひょっとしたら原文
にあたっておられるのかもしれません!

中味は、相変わらず該博な知識をもとに、アメリカ政治から社会・
文化まで縦横に論じています。政治のところは、ちょっぴり物足り
なかったけど、アメコミや日本のコミックをからめて日米の政治
関係を論じるところなんかは、個人的に「ウチダここにありっ!」
と思いました。

そして、評者からして一番面白かったのは、アメリカにおける子供
観をフェミニズムと絡めて「批判的に」(!)論じながら、アメリカ
に典型の「連続殺人者」の考察を深めるところ。たぶん、ここまで
一般読者に理解できるようなかたちで、思考のヒダを広げながら
考える人、なかなかいないですよね…。ちょっと唸りました。

議論の敷衍のしかた、そしてその議論の面白さからして、最初に挙げた
ような瑣末な事実誤認なんてちっぽけに思えます。むしろ筆のすべり
具合がスパイスだとさえ思えちゃうかもしれません。

これは、買いですね。
5.0 良質なアメリカ論
 アメリカ論として、読みやすく、射程距離も深いですね。
 トクヴィルの議論をきちんと下敷きにして、現代アメリカを平易な文体で解説しています。
 また、構造主義的評論の良質なものでしょう。
 つまり、ある問題を論じるのに、様々な事例から、同構造を取り出すスタイルです。しかし、80年代に流行ったレトリカルなものではなく、平易で、真摯です。
 「スローフードの排他性」「『ガンダム』型物語が、アメリカで流行らない理由」「ハリウッド映画の子どもが、乱暴である理由」「連続殺人鬼こそ、無個性」「低所得層が『ジャンクフードで、つい太ってしまう』という選択肢を敢えて選んでしまう動機(経済学とは異なる水準での説明)」等、読書意欲をそそるテーマが目白押しです。
 版元のNTT出版は、ヒット作に恵まれていないようですが、本書は長く読み継がれるであろう良書であり、企画者の功労は評価されるべきでしょう。
4.0 「誰でも言いそうなこと」は書いてない
内田さんの著作ではいつものことですが、「誰でも言いそうなこと」は書いてありません。なかでも、一部のアメリカ人の異常な肥満ぶりについて、「記号としての肥満」「階級的異議申し立てとしての肥満」「豊かな文化資本を享受できない社会階層の怒り」と解釈している部分などは、大いに納得してしまいました。

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