あの頃は若かった。
氏の日記シリーズは、本書にいたって大きく方向性が変わったような
気がする。というかなんというか、ぱっと見た印象としては、
ずいぶん老け込んだなあ、という感じだ。といっても氏が衰えたというわけではなく、
なんだか漫画全体の雰囲気が年をとったなあという感じで、
しかもそれを積極的に全面に押し出しているようなのだ。
ただただ笑わせてくれた防衛漫玉日記の頃が懐かしい。
あの頃のようなバカはもうやってくれないのかなあ。ちょっと残念。
その昔ファンだったものとして
評価が高いレヴューが多いがあえて苦言を述べさせていただく。わき道から入る。日本で文学といえば、それは「私小説」であり、英訳すれば「I Novel」、じゃあ小説になるには「I(私)だけよけいだ」と喝破したのは吉田健一であったが、書かれたテクストとはインクの染みの集まりであり、それがある配列を取ると、それは絵になり、言葉になる、結局はそういうものなので、そういう次元に作家の俗な部分を持ち込んでどうのこうの、というのは古い、というか、要するに面白くない。
そう、面白くないのである。「今の」桜玉吉は(「ファミコン通信『しあわせのかたち』」からの読者なら分かると思う)。いつからこの人は嫌な店員のいるコンビニに行ってわざわざそれをマンガに描くような人になってしまったのか。なぜそんな店に行かないようにするということさえ思いつかなくなってしまったのか。暗い私生活を「そのまま」垂れ流すことをいつから芸だと勘違いしてしまったのか。それを思うと哀れでならない。無念である。編集者は何をしているのか。「しあわせ~」の昔は良かった、というのは容易い。そう、人は変化していかなければならない。だが桜玉吉は変化の道を誤った。十年来のファンとして、無念でならない。