私立探偵・畝原シリーズ
冤罪により新聞記者の職を失った私立探偵・畝原が登場するシリーズ第4作簡単な浮気調査と思われた仕事が思いがけない方向に展開する。「妻」とし依頼した人物が実はストーカーであり、クレーマーとしてその筋では有名な人物だったのである。この調査が、ばらばら殺人、そして利権が絡む巨悪へとたどり着くハードボイルドの長編である。1000枚と言う長さを感じることなく、作中に引き込まれる秀作である。
一点だけ難を挙げるとすれば、会話文中の言葉遣い。これは、作者が悪いというわけではなく、単に私の感性とあわないだけだと思うが、ところどころ違和感を覚える言葉遣いがあり、私にとっては読書のテンポをそがれた感じになった。作中で高橋陽介という正体不明の男が調査協力者として現れるのだが、この男の「困ったもんだ」というセリフが、なんとも会話にかみ合わず、特に違和感を覚えた。この高橋が、この作中でもっとも個性(アク)が強く、印象的な登場人物ではあるのだが、ハードボイルド作品としてこの作品を考える際、果たして本当に必要な登場人物であるのか、疑問をもった。畝原と高橋が、次第にお互いを信頼していくさまを描きたかったのかもしれないが・・・。
なお、畝原シリーズは「待っていた女」「渇き」「流れる砂」「悲鳴」「熾火」
「待っていた女」と「渇き」は、幸運にも、一冊の文庫として読むことができる。