これはビジネス書を越えた、人生の座標軸が明確になる哲学書だ
本書はいわゆる企業モノのビジネス書という形をとっている。
そして、会社の歴史、経営者の個性、企業理念、優位性を語り尽くしているから、
確かにその役割を果たしている。
が、これはビジネス書ではない。正確に言えばビジネス書を越えた哲学本である。テーマは、社員数たった59人の工務店「近代ホーム」を率いる松本社長。
この会社、確かにすごい。月に200人もの見学者が来る。年に最低1~2軒の
受注しかない工務店もあるというのに、2年先まで予約で埋まっている。
セールマンが一人もいない。それも当然、セールスする必要がないのだ。
社員は、施工主と話をするとき家の話ではなく、まず生き方、人生の在り方につ
いて胸襟を開いて話し合うという。家ではなく人間の生き方で勝負している。
だから、「経営者のすべき最も大切なことは社員教育である」と言い切り、
新入社員全員に対し、毎日メールの交換をするという。
本書は、この社長がつくった近代ホームという小さな会社が、なぜここまで世間
から注目され、見本にされるのかを、取材して書きつらねているが、それを筆者の
心の動き、松本社長に触発され、自分自身を見つめ直すというスタイルで進んでい
る。松本社長の「表裏のない」「きれいごと」的生き方に影響されながら、人間と
して正しい生き方を、筆者自らの内側をさらけ出しながら、優れた文章力で表現さ
れている。
心地よい余韻が残る傑作といえる。