興味深い内容で示唆に富むのだが、読みにくいのが玉に瑕
本書は、事前にいくら周到に計画されていても人間の行為は実行時の状況に左右されてしまうものだ、と言うことに関する研究について述べるものだ。
ハードウェア、ソフトウェアのユーザーインタフェース設計に携わる人以外にも、広く読者の興味を引く内容だと言える。内容的にはユーザーインタフェースの黎明と言える初期のインタラクティブな計算機システムの話から、実行計画の構成要素説明を経て、行為の背景には明確な意図がないという議論を展開する。その後、会話やコピー機の操作を通じて設計意図と実際のユーザー行動のズレとその原因を分析する。
しかし、監訳者のあとがきにもあるが、本書は非常に読みにくい(当方の読解力にも大いに問題はあるのだろうが)。翻訳後でさえこれでは、翻訳者の苦労は想像するに余りある。
論文形式の引用が多い記述方法や、個々の章での論旨の総括を入れずに、論理を展開していくあたりは読者として専門家であることを要求しているのかもしれない。個々の論点や、調査手法などはとても興味深いのだが、読んでいても論旨がわかりにくいのが残念だった。コピー機操作の説明(本書ではエキスパート・ヘルプ・システムと呼んでいる)のあたりは具体性があってよく分かるのだが、ポイントを箇条書きなどにしてまとめるような記述があっても良かったと思う。