書皮:この日本独特の美を「過剰包装」の一言で潰すのは惜しい
購入した本に書店がかけてくれる包装紙:書皮。各書店がデザインを競うかのようにこしらえたその個性的な書皮の愛好家団体が優秀な「作品」に賞を毎年与えています。その受賞作を集めたのが本書です。 電車内で周囲の人に自分が何を読んでいるのか知られずに済むという実利性のほかに、一個の芸術ジャンルとしても立派に通用する書皮。本書には私もなじみある作品から、一度手にしてみたいと思わせるような地方都市の書店のものまで幅広く掲載されています。美術カタログといった趣で、マニアならずとも眺めていて飽きません。
私はどんな国へ出かけても時間の許す限りは書店へ立ち寄ることにしています。英語圏での古書店巡りは趣味の一つですし、その国で話されている言葉ができない場合でも絵本や写真集をお土産代わりに購入して帰ります。ですが私の知る限り、書店が書皮を提供してくれる国は日本くらいなものです。
台湾や香港といった中国語圏でも書店で買い物をしたことがありますが、本にカバーをかけてもらった経験はありません。お隣の韓国でも同様。本書によれば93年に過剰包装として廃止されたとありますが、私がソウルの大手書店で91年に買い物をした時にも書皮はありませんでした。
確かに日本の書皮は過剰包装かもしれません。ですがこれだけの美術作品なのですから、手に入れたいと思うのは人情というもの。本書を読みながら私は、美しいものを愛でたいと考える日本人気質を書皮に見たのです。