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本書は、タイトル通り中世ヨーロッパにおける写本製作について、出版・教育の拠点として機能した修道院を大きく取り上げながら述べる。印刷は進歩したもの、手書きである写本は遅れたものという認識を正しつつ、コスト回収が要る印刷出版と異なり少部数の出版が出来た写本製作の製作、出版、流通について語り口に近い文体で読みやすく書かれている。羊皮紙の調達(材料は豊富だが加工に手間がかかる)、文字を書き写す人、どのような本が書き写されたのか、キリスト教発展の出版への影響、写本製作や教育の栄えた文化センター的地域について、など多彩な内容が語られていく。中世における本がどのように作られ、教育や文化の発展にいかにして貢献したか、また、読書や本づくりがどのように捉えられていたのかが語られ興味深い。ただ、しっかりと定評ある文献にあたられているにもかかわらず、誤記・誤った断定が散見されるほか、固有名詞の誤読、インターネットの無視、誤植もみられるのが残念である。
現代人はともすれば、印刷技術が誕生したおかげで本が安くなっ たと考えがちであるが、筆者によれば、相対的に羊皮紙の値段が高 かった当時は筆写のコストは実はたいしたものではなかったらしい。 むしろ印刷技術の功績は写し間違いをなくしたことにあるという。 したがって、印刷技術以前の出版で重要なのは、いかに間違いのな い原典を入手するのか、そしてそれをいかに正確に複写するのかと いう点にある。そういった本の保存・蓄積と複製の中心にあったの が、中世ヨーロッパでは修道院とその周辺に生まれた出版業者であ ったという話。 印刷技術以前の本の形態はどんなであったか?どのような機関が 本を作成し、どのような方法で流通していたのか?現代の印刷され た本とのあまりの違いが面白かった。 同じ著者による「パピルスが伝えた文明」もおすすめ。こちらは同 じ視点で古代ギリシャ・ローマに焦点を合わせたもの。