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オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険

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オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険の商品レビュー

5.0 すべて全否定ではありません
面白い.これまでの筆者の印象は優秀な翻訳家というものであったが,この本は科学的な読み物として一級品である.ただ,論じられている研究・報告すべてが神話として全否定されているというのではなく,批判のレベルにはいくつかあることに注意が必要である.
(1)研究・報告のデータや写真が胡散臭いレベル
「オオカミ少女」「ポップコーンのサブリミナル実験」「バートのふたご研究」
(2)研究による結果の解釈が今考えるとオカシイと思えるレベル
「言語相対仮説」「心音説」「プラナリアの学習実験」
(3)メディアの効果によって話が誇大化してしまったレベル
「ワトソンのアルバート坊やの研究」
(4)現在では反面教師の例であり既に神話ではなくなっているもの
「賢い馬ハンス」

なお,筆者は原著にあたることを強く勧めており,早速アルバート坊やの原著を読んでみた.著者は,坊やは母親がちゃんといるのに,これまでの出版物では孤児のように扱われることが多いと嘆いていたが,私には孤児(あるいはそれに近い状態)であるように思われた.原著には「母親(mother)は施設(病院)の乳母である」と書かれているものの,その直前に「坊やは生まれてからずっと施設(病院)で暮らしている」とある.筆者の解釈に従えば,母親は住み込みで働いていて,そこで坊やが育ったということになる.それならもっと具体的な記述があるだろうし,motherには養育する人という意味もあるはずである.すぐあとには,「坊やはこれまで施設(病院)に連れてこられた中で,もっとも健康な一人」とされている.住み込みの母親と一緒にくらしている子供を,そのように表現することはないだろう.

少し皮肉っぽくなるかもしれないが,やはり原著にあたることは必要である.
5.0 オオカミ少女はいなかったのか…
1章)オオカミに育てられた少女は捏造
2章)サブリミナル効果は捏造
3章)言語や文化が知覚を制限することはない
4章)バードの双生児研究は捏造
5章)母親が赤ちゃんを左胸で抱く根拠はまだ不明(心音説は否定的)
6章)計算できる天才ウマは、計算しているのではなくて回りの挙動で答えていた
7章)プラナリアの条件反射は可能で、共食いによる条件付け成立は何によるものか未だ不明
8章)アルバート坊やの恐怖条件付け実験は怪しい
終章)心理学を科学として認めてもらうためには
以上の9章からなる本。

オオカミ少女とアルバート坊やについては大学の講義で学んだので、完全に信じ込んでいた。なので本書を読んで本当に良かった…。
終章で、心理学が胡散臭さを払拭し、科学として認めてもらうためには、
「論理的にものを考える、原典にあたる、噂を頼らない、疑う」
ことが大事だと筆者は述べている。
基本的なことだが、とても大事なことだと思う。心に留めておきたい。
5.0 いくつかは信じてました(笑)
多くの訳書のある実験心理学の研究者による、心理学関連の神話の解体。心理学といってもフロイト
やユング的なオカルト系のもの(失礼?)ではなく、オーソドックスな実験心理学系。
アマラとカマラや、サピア・ウォーフ仮説、双子の研究など、誤りであることが知られているのに、未だ世間
で流布している与太話を、それがなぜ広まってしまったかまでも視野に入れながら、粉砕しています。
与太話を粉砕することによる爽快感だけではなく、未だ結論が出ていないのに、あたかも定説のようにし
て吹聴される説にも言及しています(記憶物質はRNAなのかとか)。

学説史的な概説だけではなく、あたかもミステリーを読んでいるような趣もあり、言及されるトピックの興味
深さもあって、途中でどうしてもやめられませんでしたよ。一気に読了。

アノマリーを精査することによってノーマルなプロセスへの理解が得られる、ということは多くの学問の手法に
もなっているように、与太話を粉砕することによって学術的な営為の正統な姿もまた知らしめてくれます。

また巻末の注(参照文献)が面白い。
本書を一読して、読みたい本が何十冊も増えました。
巻末の参照文献リストから読みたい本や論文がどんどん見つかるってのも、これまた、著者のトピックの
選択と紹介の仕方の手柄であるかも知れません。
お金と時間の点で、非常に困ったことだと困惑しつつ、ニヤニヤする自分を自覚中。

著者の同様なテーマでの続刊を期待しながら、他の分野でも、こうした傾向の文献が現れることを期待
してたりします。
5.0 「イッキ読み」できる学術書
いやぁ面白かった。
「イッキ読み」してしまいました。いちおう学術書だというのに(笑)。
なんで一気に読めるかというと、良質のミステリを読むのと同じワクドキ感があるからなのだ。「神話」の一つ一つを検証する筆者の論理は明快で痛快。それはあたかも、名探偵が関係者を集めて「謎解き」をするかのようだ。

特に「オオカミ少女」の写真をめぐる「謎解き」には唸らされた。
もっとも有名なこの「事件」の謎解きをしてもらうだけでも、この本は十分買うに値すると思う。
5.0 え、プラナリアの実験もちがうの?!!
 他のレビューにもあるとおり、心理学の世界でしつこくはびこるインチキな伝説や実験をまとめて反駁してみせた、たいへんにおもしろい本。どれもみんな漠然と聞いたことはあったけれど、あたらめてその成立事情や流布の状況を説明され、そのおかしい部分を解説されると読み物として実に楽しい(すぐに増刷されているのもうなずける)。いくつかは、ウソだということさえ知らなかった(プラナリアの学習実験は本当だと思っていた! とはいえこれはウソというより解釈の問題のようだが)

最終章で、「心理学は新しい学問だから」という(百年前の本の孫引きによる)弁明をやめようという著者の心意気は立派。もうそろそろ成熟した分野として、ゴミは切り捨てて、後ろ暗さのない学問になろうぜ、という主張には感心するし、本書はそれに十分貢献していると思う。

ただし……8章にスキナーが娘を箱に入れて条件付けして育てたという話が出てくるけれど(p.201)、実はこれも心理学の都市伝説だという強い説がある。ちなみに、そうした冷たい機械的な条件付けを受けた娘さんは精神異常になって自殺した、というバージョンまで流布して行動主義批判に持ち出されたりしているが、実はまったくのウソらしい(図8.5に出ているのは実はただのベビーサークルもどきらしい。商業化されるときにスキナーの名前が利用された可能性はあるが)。娘さんはふつうに暮らしているし、別に条件付けをされたわけでもないとのこと(父親の思想が変に歪められて喧伝されているのに心を痛めていたそうな)。このようにまだまだこの分野の都市伝説はたくさん残っているので、こうした話も真偽を確認して、是非とも続編を書いてほしい。期待してます。

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