ドキュメント以外の重みを感じる
本書は、過去の悲劇的な28ケースに及ぶ航空機事故のボイスレコーダーを詳細に記した画期的な本だ。状況によりその規模は大小あるが、全てで極限状態においける実情が生々しく記されている。このような系統の本は興味本位的側面が目立ちがちだが、私は改めて本書によってパイロットとしてのプロフェッショナリズムを感じた。多くの乗務員が生死を決する状況になっても多少の気持ちの揺らぎ(或いは自ら犯した失態)がありながらも、「乗務員」としての任務に冷徹なまでに徹している職業魂に心を打たれた。それは、先日起った利益優先人命軽視のJR西日本の方々にこそ見てもらうべき書なのかもしれない。そのような任務遂行の中で、流石に末路を悟ったのか?一瞬こぼす遺される者達への愛の言葉などは、尚更胸を打つ。このように悲劇的事例ばかり収録されているが、ラストケースでは多くの生存者を生んだケースを収録しており、絶望的状態から不時着への執念、究極的技術者としての手腕が記されている。何より精神的な側面、つまり極限でのユーモアの大切さ、機長、副操縦士、機関士とのチームワーク、或いは前述したプロフェッショナル、冷静判断等は、全ての職業に通ずる重要な意味合いを含んでいるに違い無い。
良く極限状態にこそ、本当の人間性が表れると聞くが、正に本書はそのシチュエーションを皮肉にも提示しているのだろう。
最後に、上記の意味で本書は画期的であるが、活字では限界がある。つまり肉声を聴く事をお薦めする。例えば御巣鷹山墜落で「どーんといこうや」の活字では冷たい印象だ。が肉声を聴くとその語感等で「励まし」「悟り」「諦め」等の様々な意味合いが混成し、実にドラマティックに訴える。「日航機 音声 墜落」と検索すれば視聴可能だ。また海外サイトair disaster com ではボイスレコーダー、や英語版の会話も閲覧可能なので、更に探求したい方は推薦のサイトだ。