誤審を防止するためのビデオ再生と線審の復活についてはどうなのだろうか
1965年から2000年までセ・リーグの現役審判だった人物の回想録。舞台裏の打ち明け話はどんなものでも興味を引きますが、これも同様。名監督・名選手との味のある交流はもちろんのこと、自らの誤審に関わる苦い思い出などについても包み隠さずバランスのある真摯な筆致で綴っています。溜飲を下げることだけが目的の書ではないので、好感が持てました。 長嶋・王といった球史に残る人物は、審判団も一目置く存在であったことがよくわかります。また星野・落合といった面々が想像以上に審判と腹を割ったやり取りを球場の外でも交わしていることが窺い知れて、興味が尽きませんでした。
最終章「田中式審判術の極意」は、正確なジャッジを目指す審判の工夫について記されていて、こうした知識と共に試合観戦するのも一興かなと感じた次第です。
ただし、不満の残る点もあります。
野球ファンの視点で言わせてもらえば、誤審と取られかねないような際どいジャッジについて、どうしてビデオ録画による検証を行なおうとしないのか、その理由が本書では理解できません。審判団の拒みかたは、私の(そしておそらく多くの野球ファンの)目には頑なであるとしか映らないのです。昨今、テレビ中継の録画再生技術はより迅速、より多角的、そしてより高画質になってきています。ですからそうした映像を目にしてしまったファンには、審判団の誤審は、それがどんなに判断の難しいものであっても、歯がゆいことこの上ないのです。
こうした誤審防止策としてのビデオ再生に関する著者の主張は歯切れが悪く、明快とは言えません。また、線審が廃止された経緯や、審判6人制復活の可能性については本書で語られていませんでした。
ファンも選手も納得できる楽しい野球が見られるように、この点は今後も検討すべきだと思う私にとって、この本は議論が尽くされていないように見えました。
キャッチャーの後ろから見た野球
セリーグで38年間審判を務めた田中氏が書いた本です。
往年の名選手や一癖も二癖もある監督とのやりとりが非常に興味深かった。特に古田や谷繁、達川などとの駆け引き、星野や長嶋、王との審判の尊厳をかけた戦い、そうまさに戦いという言葉がぴったりでしょう。阪神ファンの私はよく、「ジャンパイアが・・・」などと球場やテレビの前で審判の判定に文句を言っている。しかし、この本を読んで反省しました。選手たちも戦っているが審判も戦っているのがよく分かった。
ビデオゲームのようにコンピュータがストライク、ボール、アウト、セーフの判定をしたのでは楽しみ半減、いやもっとかもしれない。
人間の審判が判定するのだからこと楽しいのだ。審判の方は大変ですが、これからも頑張ってもらいたいです。