ビジネスでの心理に対する万華鏡! 新感覚の「やる気」本。
「組織」の意志などない、あるのはそこで働く「人」の意志だ、と看破する著者は、
企業で働く個人個人が、その職場での人や仕事との関係性の中で、どのように
「やる気」を沸かせれば良いかを説く。しかし完全に既存の「やる気」本とは
一線を画している。異色の心理学者チクセントミハイが説く「フロー経験」の説明から、自分の心に
従う、主体的な状態などを体系づける。また、「茹でガエル」の話から、捨てる技術
について考察を深め、感情を強制されるスチュワーデスの研究を例に、演劇論など
にも広がりつつ、感情制御が求められる現代企業の意外なリスクも説く。
デリバラブルというコンセプトの紹介も秀逸だった。何ができるかという言い放ちの
一人称的な状態から、「相手に何をもたらせるのか?」という関係性の中で存在や
働きを問い直す話は、人事部などやMBAコースのゲーム課題などを例に十分に
考えさせられた。
心的エナジーというコンセプトは、焦点を結んでいるようで、まだまだ発展途上という
印象をぬぐえなかった。しかし、ヘッセの東方巡礼とサーバント・リーダー、
ピレネー遭難者が生還した際のアルプスの地図、陶淵明の詩、フランツ・カフカの生涯、
苦学のジョン・シュチュアート・ミル、、、著者の広範囲に深く及ぶ博識と、
実践からつむがれた物語は、読み応えたっぷりです。ここに書いたことが、
心にほんの少しでもひっかかった方は、買って後悔はしないと思います。