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代数に惹かれた数学者たち
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代数に惹かれた数学者たちの商品レビュー
コンパクトながら壮大な代数史
代数についての数学史では大きく取り上げられることの多いガウスやオイラーに関してはそれほど紙数を割いていませんが、彼らよりも後の時代、19世紀以降の代数について従前の書籍よりも詳しく、現代代数への道がよくわかります。その意味でバランスが取れた本だと思います。取り上げられた代数学者は著者の好みによるらしく、キャラが立っており、そのさまを楽しむことのできる、数学者についての本だとも言えます。
駆け足の代数学史
本書は古代の数学から説き起こし、圏(カテゴリー)論のような極めて抽象的な現代数学にいたる数学史を、代数学を中心として概観したものである。代数学の基本的概念の初等的説明をしながら、多くの数学者の略伝を織り交ぜて、代数学がどのように発展してきたのかを非専門家向けに解説している。だが著者の前著「素数に憑かれた人たち」に比べて、もうひとつ焦点がはっきりしないうらみがある。
代数学は、たんに代数方程式の解法を見つけるという問題から、方程式の代数的可解性を群の可解性に帰着させるガロア理論を転回点として、抽象代数学へと発展した。そして、群論や環論は、原子物理学が化学を飲み込んだ如く、数論も幾何学も関数論も飲み込んでいった。本書ではそのあたりの歴史的展開が生き生きと語られる。だが残念ながら、微分方程式論などを環論的に構築した佐藤幹夫氏らの代数解析については触れられていない。また素粒子物理学への応用については、相対性理論におけるローレンツ群や素粒子の対称性におけるリー群が挙げられているが、素粒子物理学の基礎理論である場の量子論の構成が、作用素環の理論に基づいていることは述べられていない。
雄大な物語
代数学を中核に据えて、色々な人物の織り成す人間模様を描いた本である。数の代わりに文字を用いることを始めた人達として、Descartes, Newton, Leibniz, Viete等が、方程式から群への動きに貢献して人達として、Lagrange, Cauchy, Abel, Ruffini等が、環論に貢献した人達として、Noether, Hilbert, Kummer, Dedekind等が、幾何学方面に足場を持ちながら何らかの意味で代数学と大きな関係を持った人物として、Lie, Klein, Poincare, Plucker等が、現代代数学の中心にいた人物として、Lefschetz, MacLane, Zariski, Grothendieck等がとりあげられている。前近代からも、3次方程式の一般解を見つけたCardanoやイラン=イスラム文化を代表するOmar Khayyamあたりが取り上げられている。代数幾何学を話題にしているのに、イタリア学派がやけにあっさりとした扱いしか受けていなかったり、上記の人物の選択にはちょっと首を傾げる点も多々あるが、こういう素人が素人のために2次資料を駆使して書き上げた本に、そこまで要求するのは酷というものだろう。いずれにしてもepisodes集として十分楽しめるつくりになっている。私にとって印象深かったのは、Grothendieckの天才が生きていく上での救いようのない不器用さと表裏一体になっていることと、古代に文化の中心であったエジプトのAlexandriaの滅亡に至る経緯であった。最近は高校でも線形代数を勉強し、2次正方行列についてはCayley-Hamiltonの定理あたりまで勉強するが、そういうものが形成されていく19世紀のイギリスの話は高校生にも十分楽しめる作りになっている。是非一読を薦めたい。
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