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この著者は『百怪、我ガ腸ニ入ル』で追悼文を寄せている一人なので竹中家と深い関係だと思って読んだ。しかし本書は遺族未公認出版の上、抗議を受けているという。 図版に竹中英太郎の素晴らしい絵も写真も1枚も無い。巻末に申し訳程度に没後の展覧会写真の1頁があるだけ。内容は思想的な側面中心に述べられて、画家としての魅力には殆ど触れてくれない。英太郎が筆を捨てた戦後の山梨時代に著者は関わりを持つ為、その辺が最も語りたかったのだろう。 若い頃は大杉栄の仇を討つとか山梨では労働闘士である半面マッチポンプだと言われたりとか、こういう記述が遺族の反発を買ったのかどうか判らないが、冥府での英太郎・労親子の対話「抱いてみたかった女が何人いるのか、心残りで」みたいな調子で全編語られる為、どうも著者の創作が介入しているのでは・・・と勘繰らざるをえない。 「挿繪畫家竹中英太郎」というHPがあり一見熱心なファンらしいが、よく見ると先人の誤りや不明ばかりを論って自分が最も詳しいのだという矮小な自己満足しかそこにはない。本書もそれと同義に見えてしまった。評伝を出す際に必ずしも遺族の承認を得なければならないという決まりがある訳ではなく、あったらあったでドイルの伝記のように遺族に都合のいいようになってしまう恐れもある。とはいえこういう人々が湧いてきて竹中英太郎記念館は大丈夫なのだろうか?竹中英太郎は語り部に恵まれていない、と思う以上に心配になってしまった。