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歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間

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歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間の商品レビュー

4.0 民主主義外交の「思想背景」

ヘーゲル・カントらを引用しており「哲学」に分野わけされる本書だが、むしろ現代の国際政治・外交問題などに欠かせない一冊だろう。特にアメリカのイラク政策や、日本外務省の「自由と繁栄の弧」といったトピックにも通じるものがある。



フクヤマは自由・民主主義liberal democracyの体制があらゆるイデオロギーに勝利した、人類が行き着く最終であるとしている。民主主義国家はファシズムに「軟弱な国家」、共産主義に「ブルジョワジー支配」と呼ばれ非難されていたが、いずれの体制も実質崩壊した。正に自由・民主主義の勝利、というわけである。



また富める民主主義国どうしは平和を享受し、戦争の可能性は低い。よってフクヤマは、アメリカは民主主義を推進させ、「歴史の終わり」を地球上で完結すべきだと説く。全ての国が自由・民主主義国であれば、(理論上)国家間の戦争はなくなるわけだ。
よって本書は以下の内容をを示唆している。民主主義の「価値」や、それを「推進」しようとつとめる国・政治家の知的根拠である。テレビや新聞で政治家が「人権」「民主主義」に訴えているとき、本書で述べられている思想がたぶん背後にあるのだろう。



が、こういった説を唱える人は、古くは「夢想主義者idealist」、現代では「ネオコンneo-consevertive」と呼ばれ、批判の対象となることもしばしばである。
という訳で、本書は反論書などと共に一読されることをオススメする。ただ、冷戦後の国際関係・政治の本ならば大体は触れているが。ともかく冷戦後には避けて通れないトピックなのだ。













4.0 「歴史」ではなくて、人類の進歩と資本主義の勝利の話
この本を、歴史哲学の本だと期待して読むと失敗します。
ヘーゲル=コジェーブの進歩史観の話がちょこっと出てくるだけです。
この本の本質は、ソ連崩壊により、自由主義・民主主義が最終的な勝利を収め、人類の進歩も終結した(ユートピアになった)ということです。


ただ、私自身はこの本の意見には賛成しません。

まず、資本主義の勝利は、あくまでもそれが均衡して安定した状態であることは示しますが、最良であることは示していません。
アドルノの言うように「啓蒙により文明化し、啓蒙により野蛮化する」可能性も十分あります。

次に、勝ったものが正しいという考え方自体が、極めて自由主義。民主主義的なものです。そういう意味では、自由主義・民主主義を判断根拠として、自由主義・民主主義を最良としているのですから、循環論法でもあります。

しかし、乗り越えられる古典としても、読む価値は十分にあるでしょう。
5.0 「歴史」の考察
(上下巻あわせてレビュー)

歴史とは何かを問うている壮大な歴史書。
著者のフランシス・フクヤマが1989年に The National Interestで
発表した "The End of History?" が本書の基になっている。

私が読んだのは1992年の第一版の方である。

本書は「歴史」を「唯一の一貫した進歩のプロセス」であると捉える
ことから出発する。フクヤマは人間について考察し、その本性として
「認知」を求める欲望があり、歴史を前進させてきたのは、その人間
の「認知を求める闘争」であるという結論に至る。その認知への欲望
を満たすための最も望ましい体制がリベラルな民主主義であり、これ
が確立されることで「歴史」は終焉する。

リベラルな民主主義は多くの深刻な問題を抱えているが、それはその
原理を否定するほどの問題ではない。これまで歴史上に現れては消え
ていった多くの体制に比べると、その内部矛盾ははるかに小さいもの
である。

本論はプラトンやカント、ヘーゲル、ニーチェなどの思想家の人間観
や国家観を踏まえた上で展開されており、特にヘーゲルの観念論の影
響を強く受けていることが読み取れる。


近年、西洋視点の発展論が批判され、各地域での文化に沿ったものが
良しとされる意見が多いが、民主主義の普遍的な正当性を考える上で
大きな役に立つだろう。

なお、第4部の2、3章の自由主義経済に関する記述のところで日本
人の国民的特徴について、言及している。だが、集団第一主義や若者
の反抗心の欠如などを挙げているが、やや単純化しすぎである点は否
めない。
5.0 一級の教養書
この本の素晴らしさは、その主義主張や内容云々以前に、明確な論点に基づいた論理展開、つまり書物としての分かりやすさにあると思います。日本語に翻訳されているにも関わらずほぼ違和感も無く、すらすらと読みこなせる「歴史の終わり」、これはフクヤマ・渡部両氏の優秀さに他なりません。  主義主張に関していうと、ネオコンを代表するフクヤマ氏の色合いが出ており、若干偏っていると見えなくもありません。しかし、普遍の価値観としての民主主義・人権といった主張は、使われ方に問題がある場合(デモクラシーの帝国など)は別としても、民主主義・人権それ自体は信じているであろうポストモダニスト達にとっては決定的な問題を呈しています。   またこの本は主張ばかりでなく、政治や経済、哲学についての知識を与えてもくれます。社会科学系の教養書としても役立つのではないでしょうか。是非一度、読んでいただきたい本です。
4.0 共産主義への勝利宣言あるいは政治版「幼年期の終わり」
「自由主義と民主主義こそが人類の歴史における最終形態である」とする立場から、
歴史の最終段階とはどのようなものになるのかを推測し、「自由と平等」に対抗する理念であった
失敗した共産主義や日本を筆頭とする(!)アジア圏の権威主義などについて解説している。

自由主義と民主主義を至上の理念としつつ、著者は自らのネオコン寄りの立場から
どうも自由主義のほうをより優位な理念と考えているようだ。
(強力な市場志向型「権威主義」国家などと言うことからたぶん間違いなく)
自らを奴隷とする自由はあるか、という哲学的な命題があるが
何ものにも束縛を受ける「自由」を認めないのは本当に「自由」であると言えるのかどうか疑問が残る。
一般に日本で使われている「自由」と自由主義の「自由」とでは少し意味が違うので
どちらの意味で使っているのかをよく考えて読んだ方がよいと思う。
また自由主義も民主主義も、理念選択の自由を与えているところに特色があるが
これはつまり融通無碍というか現実主義(作中に使われている概念ではない)的な
問題解決の方法を保証しているだけで
言わば「世の中の理念を決定するための理念」なので
これを最高の形態と言われても腑に落ちない。

文句ばかり書いたが、これこそ理念の違いによるものであり
江戸時代のスノビズムの可能性に言及するなど労作なので星4つ。

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