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絶頂美術館、たしかずいぶん以前に雑誌の連載で拝読していたように思います。 西岡氏の仕事は常に美術界の最先端を行き、この世界の前人未到の知見を切り拓いてこられたとお見受けしています。 いまでは雑誌で美術の記事を読むというのは当たり前になりましたが、私の見る限り、一般大衆が雑誌というたいへん身近な情報源から、敷居の高かった美術を、共感を持ってとても分かりやすく鑑賞することができるようになったのも、西岡氏の功績だと思っています。 絶頂美術館も、さすがに目からウロコの名作。おすすめです。
西洋絵画や彫刻の中で描かれるヌードの意味について多摩美大の準教授が一般読者向けに平易に解説した一冊です。大変勉強になりました。 本書によれば、古代ギリシア・ローマ時代は「宇宙を構成する数学的な比率の法則のもっとも美しい現れが人間の肉体にある」という思想のもと、ヌードが描かれることは良しとされていました。 しかしキリスト教の普及で事態は一転。人間の肉体は「天上界に上ることを願ってやまない霊魂」を閉じ込めた牢獄と考えられ、悪魔の誘惑に用いられる性的な手段とみなされることになります。したがって裸体画は、現実世界とは離れた神話の一場面の中で描かれるときのみ許される対象となったというのです。 こうした歴史的経緯があるからこそ、神話という口実を離れたところで描かれた裸体が既成の価値観に矢を放つことを意味する時代が到来するわけです。近代以降の芸術の新しい波におけるヌードの意味についても本書をひもとくと実によくわかります。 今後、西洋芸術を鑑賞する際の手引きとして大いに役立つ一冊といえるでしょう。 残念ながら二点ほど指摘しておくべきことがあります。 一つ目は、校閲が不十分である点です。助詞の使い方に誤りがある箇所がかなりあります。おそらくは著者自身の日本語運用力に問題があるのではなく、ゲラ段階で誤字・脱字の類いを編集責任者が単に不注意から見逃したのでしょう。 二つ目はスペインの内戦の記述に正確さを欠いている点です。 「フランコの軍事政権に抗して一九三六年に始まったこのスペインの抵抗運動」(133頁)とありますが、スペインの内戦は、当時の左派政権に対してフランコ将軍率いる右派反乱軍が戦いを挑んだというのが正確な史実です。著者の理解では政権と抵抗勢力の構図が逆になっています。 私が手にしたのは初版本ですが、増刷もしくは文庫化の前に校閲をやり直すべきだと思います。
裸体表現というとそれだけで不道徳とか嫌らしいと偏見の目で見られる場合がまだまだ多い。 しかしあらゆる芸術表現の中で裸体表現は欠かせないものであることも周知の事実である。 この本は西洋絵画に見られる裸体表現についてユニークな視点から、その作品の意味や作者の表現しようとしたことなどを読み解く糸口を与えてくれる格好の入門書となっている。 さらに裸体表現のみならず、その作品が成立した時代背景や歴史的な意味なども踏まえて西洋絵画の鑑賞の見事な手引書ともなっている。 文章もやさしく丁寧でボリュームも程よくお勧めの一冊です。