批判的に読みましょう
英語は言うまでもなく、他の東南アジア言語(タイ語など)と比較してもマイナーな言語の悲しさか、インドネシア語の教本はまだまだ十分ではありません。その結果、出版する本の冊数「だけ」が多い著者が日本のインドネシア語教育の大御所であるかの様な印象を持たれ、また、本書がインドネシア語を真剣に勉強する人の「バイブル」であるかのように、時に語られています。
確かに、日本語で書かれたインドネシア語の教本でここまで文法構造について体系立ててかかれたものはないでしょう(その意味で、「日本人向け」なのかもしれません)。
しかしながら、インドネシア語はまだまだ若い言語で、日々、ダイナミックに発展していますし、地域によって好んで用いられる単語も異なります。その点、東インドネシア(フローレス)出身で日本生活が長い著者のインドネシア語は、「現在」のインドネシアで標準的に使用されているインドネシア語(新聞や雑誌、テレビに出てくる知識人のもの)とは結構の距離があります。
「インドネシア語は多様だから、それでよい」と言ってしまえばそれまでですが、やはり、インドネシア人が聞いて思わず首をかしげたり吹き出す(←古すぎて)ようなインドネシア語は使いたくないものです。
また、そもそも曖昧な文法構造を体系に押し込めようとした無理がたたり、文法的に誤った記述が多々見られます。
この本だけを信じて学習していくと、とんでもないインドネシア語が身
についてしまうでしょう。
ただ、これ以外に詳しい記述のある教本がないというのもまた事実なので、本書の使い方としては、とりあえずさっと一読して(根を詰めてやる必要はありません)、その後、全国紙のサイト(KOMPASなど)で社説を読んでみる、それで文法上の疑問点があれば再度本書を開いて検討する、と言う方法がよろしいかと思います。
身近に先生がいれば、その先生に社説と本書の記述との食い違いについて尋ねてみるのもよいでしょう。
カタコトではなく本格的にマスターしたい人はこの1冊
インドネシア語はよく「学びやすい」といわれますがそれは「言語が単純」ということではありません。カタコト程度、旅行でちょっとした買い物ができればくらいなら、自分でも驚くくらい”簡単に”習得したような気にはなります。しかし本格的に学ぶには他のことばと同じくらいの努力が必要なはずです。ことばをあるレベルまで学ぶ総時間数というものはひょっとしたらどの言語も同じくらいではないでしょうか。たとえば入門期がやさしいと完成期が難しかったり、あるいはその逆であったり・・・。 この入門書は初歩から順に”最難関”の接頭辞、接尾辞までわかりやすく解説したものです。「超」簡単、というわけにはいきませんがきちんとマスターするにはこのくらいの(かなりのボリュームです)学習量は当然必要です。これ一冊で相当のレベルまでいけます。別売りのカセット音声教材も揃えたいものです。とりわけ外国語の「自学自習」では「音声教材」がそろっている、いないを教材選択の有力条件にすべきだと思います。ことばは「音」ですから。
こんなパーフェクトマスターとも言える本書ですが、専門出版社(東南アジア関連の書)から出されているためか、人気は比較的地味であるのが残念です。インドネシア語の学習書として秀逸です。