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イタリア病の教訓 (新書y)

イタリア病の教訓 (新書y)

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イタリア病の教訓 (新書y)の商品レビュー

5.0 脱税したもんがち
非常におもしろい。こういう一冊を読みたかった。
イタリア経済は90年代半ばから低成長期を迎えた。ユーロ圏平均の経済成長率を一貫して下回り、対岸のスペイン(よくイタリアと比較される)に肉薄されている。96年の一人当たりGDPは、スペインを100とするとイタリアは135。2006年には、これがほとんど並んでしまった。

なぜこうなったのか。端的にイタリアでは生産性が上昇していない。96年から04年の労働生産性上昇率はOECDの中で最低の水準にある。平均2.33に対しイタリアは0.48%。日本は2.0%。全要素生産性成長率も最低水準。非常に簡潔に著者の主張をまとめると、イタリアは世界経済にあわせて産業構造を転換することを怠ったためにこうなったという。まさにその通りだと思う。この停滞要因の解説だけで4つ☆。やや個人的感情もこもった国民性分析が個人的にはおもしろかったので5つ☆。

著者は、交通マナーの悪さに並行しているが、イタリア人はそもそも遵法精神が他国人と比べて希薄だという。あるアンケートによると、「規則の遵守は重要でない」と答えた人の割合は、日・米・中・独・仏・西の平均が7%だったのに対し、イタリアは22%で突出していたそうだ。脱税が多いのもうなずける。。脱税に関してもおもしろい統計が紹介されている。申告所得の平均を取ると、ローマの歯医者は28000ユーロ以下。これは、勤続10年の警察官の年収と同じくらい。そんなはずないのは誰でもわかる。ある日刊紙の推計では、控えめに見てもGDPの8%程度の税収が脱税行為によって失われているという(約1100億ユーロ)。すごいぜイタリア。
4.0 やっぱりイタリアも変だった! 憧れの異国の実態は…。
 外国について、そして外国から見た日本というテーマで「外国はこんなに立派だ。それにひきかえ日本と来たら…」という内容の本が一時期多かった。それに対して最近自分が好きなのが実際に現地に住んでいた人がその「外国」の実態を暴いてみせる本の類だ。林信吾氏や高尾慶子さんの英国本、熊谷徹氏のドイツ本、清谷信一氏がオタク本で触れていたフランスの社会など、実態を知れば日本人がコンプレックスを感じなくてはいけないほどの「理想の国」などは存在しないことがよくわかる。
 さて、この本はイタリアだが、やっぱり変だよイタリアも!! 
本書はそうした類の本の中でイタリア変、じゃなかった「イタリア編」ともいうべきポジションに十分合致する内容だ。
 この本の主題の「イタリア病」とは90年代後半から2005年頃の経済の停滞をさしているので「英国病」のように長いスパンのことではないし、著者の主張する日本の「停滞の10年」との類似も自分には微妙に原因は異なっているのでは…、とも思う。ただ、もちろん、こういう症状をひどくしないよう日本人として大いに参考になるのは確かだろう。
 しかし、イタリアというと、サッカー・ファッション・グルメ・芸術というステレオタイプな見方をされてしまうのは日本だけでなく、他のEU諸国からもそう見られているとか、経済の立て直しに成功するとそれだけで外国から「奇跡の経済成長」などと言われてしまうというところは笑えた。外国に対しての一面的なレッテルというのは別に日本人だけではないことがよくわかる。
4.0 憧れだけで語れない「イタリアの陰」
アート、サッカー、ファッションなど、その華麗な文化に目が行きがちなイタリアだが、経済の話はあまり聞かない。しかし、経済はこの10年、低迷した状況にあったという。本書は、現在イタリアに駐在する財務省官僚が、イタリアの各種経済指標を手がかりに、イタリア経済の現状、展望を論じる。

イタリアの低迷は、根本的には、ローテク企業・零細企業がほかの先進国より多かったことによる。そのために、IT化、経済グローバル化に乗り遅れて、中国などと競争して負けたこと。経済が各種規制でがんじがらめにされており、改善のインセンティブが働かなかったこと。ユーロ高で価格競争力がなかったことの3点に集約される。そして、財政でも場当たり的な対応でお茶を濁してきた。庁舎売却や、日本では考えられないが、脱税した翌年に一定の違約金を払えば、脱税をチャラにする一種の徳政令を乱発してきた。財務官僚であるからか、著者はこの現状に「正直者が馬鹿を見る」と憤る。

本書がいいのは、官僚の文章にしては非常に分かりやすく、親しみやすいということ。イタリア経済の今後の展望として、「本命・どうにか乗り越える」「大穴・ユーロ離脱」など勝ち馬予想のような冗談も交えつつ、経済・財政分析では、テレビ評論家には及ばない明晰さ、的確さがある。また、机上のデータのみならず、銀行口座維持手数料が年に24000円もかかるとか、タクシーが捕まらないというような自らの生活体験に引き寄せて、競争が極めて抑制されていたイタリア経済の欠点も指摘するのも、実感があっていい。何より、本書は財務官僚という、経済・財政運営のスペシャリストによって書かれているため、記述に信頼性が高い。

イタリアは素敵な国だが、夢から覚めた現実のイタリアを語る本は少ない。イタリアに関心を持つ人は本書を読み、イタリアの違う一面を知ることになるだろう。

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