交換価値や等価価値を揚棄する!
本書の中で山城むつみ氏は、「コミュニズムの究極の理念は、等価価値や交換価値の揚棄ということではないか」と発言しておられます(77ページ)。私はこの本全体を、この一文に向けて書かれたものと理解して読みました。そして、この本の中で一番読み応えのあるのも、同じ山城氏の論文です。
扱われているのは、マルクスが「ゴータ綱領批判」で共産主義の最終段階として掲げた、能力に応じて働き必要に応じて得る、という、余りにも有名な理念です。私もこれまでに、マルクス自身のものを含め、この高い理想について書かれた文章をいくつか読んだことがありますが、これほど論理的な展開に接したのははじめてです。わずか50ページほどの文章ですが、文章の密度も内容も大変濃厚で、刺激的です。
ラサールの「マルクス主義」と、それでは結果的に少数の特権階級の支配を生むだろう、とするバクーニンの予言を批判的に論じるところからはじまり、マルクスにおける価値<形態>論と価値<実体>論との関係を緻密に分析しながら、<使用価値>を生み出す、永遠の相のもとにある労働と、<交換価値>を生み出す、ある限られた歴史的時間の中にある疎外された労働を区別し、等価価値の本質を疑い(「平等」と「等価」の起源を問い)、ついに<売る立場>と<買う立場>を共に消滅させることを目指す、新しい<プロレタリアート独裁>の可能性を示します。
柄谷行人氏は例のごとく実に鮮やかです。でも、敢えて挑発的な言い方をしますが、少なくともこの論文を書いている山城氏は、その柄谷氏を超えているのではないでしょうか?