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失踪日記

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失踪日記の商品レビュー

5.0 病み付きになるこの失踪感!
日本の古典文学には、日常を逸脱し、失踪、漂泊のうちに息絶える、というジャンルの伝統がある。西行しかり、鴨長明しかり、松尾芭蕉しかり。本書はマンガではあるが、前述の古典の系譜に連なる、昨今まれに見る失踪文学の傑作だと思う。

本書の内容は、”全部実話です”と帯書きに書いてあるように、すべて作者自身の実体験である。マンガで描かれた私小説と言ってさしつかえなかろう。
創作のスランプから、自殺を思って家を飛び出したものの死にきれず、浮浪者として生活する第一部、
いったんは家に戻ったものの、再び家出をし、ガスの配管工見習いとして社会の底辺を垣間見る第二部、
創作の苦しみからアル中になり、遂には精神病院に強制入院させられる第三部。
いずれも日常を逸脱し、常人が足を踏み入れることのない世界へと作者は落魄していく。作者の体験を読んでいると、日常をちょっと踏み外した先には、このような異世界が待っているのだと、否応なく好奇心を掻き立てられる。

特に私が気に入ったのは浮浪者時代の、浮浪者の視点から見た現代社会の面白さ。ゴミを漁ると言う行為を通じて、大量消費、大量廃棄の社会に、裏側から鋭いメスを入れてきて、心に深く突き刺さる。またアル中病棟の悲惨さとユーモア、これもこのような世界を知らなかっただけに、大いに好奇心を満足させられた。酒の飲み過ぎは、一歩間違えば本作に登場するような悲惨な境遇に陥りかねない危険な行為なのである。

本作の面白さは、ストーリーだけではない。絵柄が大変かわいらしくポップで、およそその悲惨な体験からはかけはなれており、それがかえって作者の体験を客観視することに成功しているのだ。この絵柄なくして本作は成り立たなかったであろう。自己を客観視すること、ここから普遍性をもった優れた物語が生まれる。そのことを本作は身をもって証明してくれた。

私の知人が、本作に登場するH精神病院に関係していたこともあり、たまたま手にとってみた本書だが、その内容は思った以上に素晴らしいものであった。漂泊文学としての素晴らしさに、またマンガとしての完成度の高さに敬意を表して5点満点献上。

さて、本作であるが、作者がアル中病棟に入院し、入院後の日常生活を描写するところで終わっている。その後の作者であるが、どうやら現在は退院し、酒も全て断つことに成功しているようだ。作者にとっては思い出すのも辛い出来事かもしれないが、一度本書でこの失踪感を味わうと癖になってしまう。ぜひ退院までの生活を描いた続編を望みたいところだ。
5.0 美しい漫画
売れっ子漫画家だった吾妻ひでおさんが、仕事が出来なくなって酒びたりになり、ついにはホームレス生活を送る・・・といったさまを描いた、作品集。

とても面白いという評判を聞いていたので、いまさらながら読んでみました。

ホームレス生活をしたことのないわたしにとっては、たいへん刺激的というか、「へー、そういう生活をしてるのか〜」と勉強になることが多かったです。

例えば、

>「結局、腹へったとか(中略)煩悩がオレを突き動かしてるわけね」
>「ごみ袋あさるのなんか平気だもんね」

といいつつ、生卵やアンチョビピザ一切れなどをごみ袋から拝借する作者。生卵とてんぷら油を混ぜてマヨネーズをつくり、「めじろよ オレって けっこう 優雅?」と尋ねるシーンは妙に美しくて好きです。

 「うまげや」のごみ袋をあさって食べ物があると歓喜する作者。しまいには、どのゴミ箱にどんな食べ物があるか、だいたい予測できるようになったと書いてあります。

よくよく考えると、「あっち側」に行ってしまっているようにも思うのですが、作者のもつ人間らしい感覚が、この漫画をわたしにも共感できるところに置いてくれています。

ガス管の肉体労働をやっていた折、ガス会社の社内報に漫画を描いて送ってみるエピソードが好きです。もちろんプロの作品ですから、すぐ掲載されます。「漫画家の吾妻とは気づいてくれなかったけどね・・・」とか言いつつ、まんざらでもなさそうな作者。

ほかのエピソード(警察に保護されたら、警察にもあづまファンがいて、「先生ほどの人がどうしてここに・・・」とびっくりされた)でもわかりますが、作者を苦しめた漫画こそが、やはり作者の心のよりどころであり、誇りであり、唯一の生きる手段でもあるのでしょう。

このようにプライベートで、悲惨なことを書きながらも、読後感がさらっとしていて、それでいて美しいコマもあって、心に響くというのは、作者の漫画家としての技量にほかなりません。

作者の行動は確かに常軌を逸しているように見えます。住む家を出て行ってしまったり、アルコール依存で措置入院してしまったり、ある日突然仕事をやめてしまったり。しかしこの漫画を読むと、人間って、そういうこともあるかもなあ、などと共感してしまうのが不思議です。

もっとこのような漫画を、読みたいなと思いました。
5.0 酒はこわいね
仕事のプレッシャーで酒におぼれるというのはよくあるパターンです。わたしもやりました。アル中になる前に内臓が受け付けなくなって倒れて養生するはめになったのですが結果的にはそれでよかった。本当に呑めるとこうなるというのを、しかもまさかかつてファンだった作家さんの体験で作品として読むことになるとは思わなかった。
でも、まあ、らもさんよりはましなのかな。
5.0 129番目のレビューです
129番目のレビューですね。これ以上必要はないのかもしれませんが、ヤケテンやぶらっとバーニーの愛読者だった人間として、本当に10数年ぶりに読んだ久々の吾妻ひでおでした。
やっぱり普通の人ではないですよ。
確かに、こんなこともして生きていくことができる、というお手本にはなるかもしれないけれど、一世を風靡し、それ相応の漫画雑誌に連載を持っていたという人の「瘋癲日記」だと思います。だれもがまねしようとしてもできないものですし、やっぱりある時期擦り切れるまで仕事をした人の本当の心根だと思います。
だから、これは仕事をここまでしたんだから、ここまで壊れてもやっていけるんだ、という励ましになることこそあれ、これが、どんな生き様でもOKなんだ、という逆切れ的な割りきりには読めません。またそのように読んでは本当に目一杯仕事をした人に無礼でな感じすらします。

本当に、これは、とことん仕事をした人の記録です。脱帽以外のなにものでもない。人間ここまで仕事をして、フワーとなるべくして脱走してしまうことが重要なんだと思います。その後手に付けた仕事が(頭も使うけど)肉体労働に回帰していることがいいですよね。あれは自然のリバビリだと思います。バランスを取ってんだな、ということだと思います。
逃げてんじゃなくて、体がバランス取ろうとしているんですね。
10数年ぶりですが、昔以上の筆力と淡々とした画力に、年齢的に若干先輩にあたる吾妻ひでおを久々に堪能しました。
5.0 今の時代を生き抜く知恵
単純に面白い!興味深い!内容です。

体験した人だけが語れる面白みがありますね。

絵がとても見やすく話の展開もわかりやすい。

一歩間違えば悲惨になってしまう話を面白く語れるのは才能ですね!!!

「ホームレスをやっていると働きたくなる
 肉体労働をやっていると芸術がしたくなる」

という所に人間の本質を見たような気がした。

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