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光の教会―安藤忠雄の現場

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光の教会―安藤忠雄の現場の解説

   建築家安藤忠雄の代表作の1つに、大阪府茨木市の日本基督教団茨木春日丘教会がある。コンクリート打ち放し。直方体の箱のようなシンプルな教会堂。十字架の形をした窓が正面の壁いっぱいにくりぬかれ、そこから太陽の光が内部に差し込む。明るい光とほの暗い室内のつくり出すドラマチックな対照。「光の教会」とよばれるゆえんである。

   本書はこのユニークな教会堂がどのようにして構想され、設計、施工されたかを丹念にたどったノンフィクションだ。大学院で建築構造学を学び、構造設計事務所で実務を経験した著者の筆により、読者は建築の現場で何が行われているのかを実感することができる。コンクリートの軟らかさが少し違うだけで、どれだけ工程に影響するのか。なぜ建築家はその違いにこだわるのかといったことが、誰にもわかりやすく語られる。また、安藤のラフなアイデアがスタッフの手によって設計図にまとめられ、それを施工業者が工事現場で実際につくっていく過程が臨場感たっぷりに描かれる。

   とはいえ、本書が建築の技術面に偏っているかといえばそうではない。1つの建物ができあがるまでには、何人もの人々がさまざまな立場からかかわるのであり、そこには人間くさいドラマが生まれる。安藤と彼のスタッフ、牧師と主だった教会員からなる建築委員会、そして施工業者が互いにどのような会話を交わし、何を考えていたかについての著述も十分な量を与えられている。ストレートにものを言い、次々に大胆なアイデアを発想する安藤という魅力的な人物なしにこの本は考えられないが、周囲の人物もそれぞれ重要な役割を演じている。第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。(松本泰樹)

光の教会―安藤忠雄の現場の商品レビュー

5.0 建築とは何か
安藤建築で有名な、大阪にある「光の教会」。そのスタートから現在に至るまでの物語。「すでに安藤忠雄が名を馳せた頃の建築だし、さぞかし金のかかった……」という先入観は、読み始めて早々あっさり打ち砕かれた。金はなかった。あったのは建築を“使う”人の思い、建築を“創る”人の思い、建築を“造る”人の思い。四角い箱に長い斜めの壁。私のような建築に無知の目には、単純極まりなく見える設計が、いかにものすごい想像力と緻密さの産物かを知り驚嘆した。使い易さ、便利さを望みたくなる使い手と、それらを一蹴する創り手。そのくだりを読んだ時、初期の安藤作品「住吉の長屋」を思い出した。住吉の長屋もまた、光の教会と同じく「光」が建築の重要な素材であり、「不便」そのものの建物だった。「光」にこだわる安藤の原点、「建築とは何か」という安藤の譲れぬ一線、安藤の絵を実現させた職人たちの魂、「光の教会」のその後……。読み応え十分と断言できます。
5.0 人情話。
安藤と教会の施主、安藤担当の記者、施工会社の苦悩、所員の葛藤。
ほぼ5人の登場人物なので頭はこんがらがらない。

安藤の提案に不安を覚える施主(資金不足)
施工会社の負担
安藤事務所のミズタニの安藤の考えをどう捉えれば安藤が納得するか。
施主は派手な教会にはしたくない。
カテドラル教会(丹下健三)のようにはしたくないという事。

住吉の長屋で名を馳せた安藤なら低予算で出来るのではないかという思惑。
そうはいかない安藤事務所。
でも施工会社の社長の人柄に何とか資金面で四苦八苦する安藤事務所。

その中で色んな重圧を覚える所員・ミズタニ。
十字部分の施工について色んな施工方法が提案されるが安藤は譲らない。

箱を斜めに貫くコンクリの壁の施工方法についても色んな議論。
安藤は譲らない。そんな人。
敷地に木があれば、切る必要はなく、その木を迂回する事で
建築を色んな方向から見ることができる。との事。

「赤字ですわ」
安藤の人柄も出てる本です。
あくまで著者から見た「光の教会」完成秘話です。

ミズタニさんの苦労してる様子が一番印象的です…。
5.0 建築の醍醐味を味わえる作品です。
世界的な建築家、安藤忠雄さんの仕事ぶり、人となりが強く伝わってくる物語でした。大阪府茨木市にある茨木春日丘教会が完成してゆく工程を追いかけています。まずもって、この教会は破格の低予算での注文でした。ところが、安藤氏は、興味が湧いたようで、注文を受けてしまいます。この儲からない工事の引き受け手を見つけることからスタートしました。安藤氏は盟友の建設会社社長に依頼します。安藤氏は、施主を選ぶそうです。教会側は、安藤氏でなくてもよかったようですが、安藤氏がこの教会建築に何かを感じたようです。当時、バブル全盛で、現場の職人が集まりません。建築資材も高騰、その中でとことんまで芸術性にこだわりぬく安藤氏とその天才振りを信じて採算の合わない工事でも誠実に進めてゆく建設会社社長。光の教会を発想したと思われる様々なエピソードや登場人物のバックグラウンドも書き加えられており、建築現場の臨場感とものづくりへにこだわりぬく人たちの熱情が感じられました。そして、この光の教会は、安藤建築事務所や教会の人たち、建設工事に携わった人たちによって何年にも渡って手を加えられてゆきます。安藤建築に終わりはなく、その建築物を使う人たちが使い続けることによってさらに輝きをましてゆくのです。建築の醍醐味を味わえる良書だと思います。
5.0 名書
日本一の建築家が一つの大作品を完成させるまでの物語(実話)
ページ数は400と分厚い本だが、この読みやすさ、ハンパない。建築の知識がなくてもすいすい読める。
一つの建物を建てるのにどれだけ大勢の人が関わるのか、という事に改めて気付かされる。
ストーリーがおもしろく、専門書というよりは読み物に近い。それでいて所々に専門知識が盛り込まれているので勉強にもなる。
建築好きは絶対読むべき。建築を知らない人にもおすすめ。こういう世界がある、という事を知ってほしい。
4.0 安藤忠雄のすごさとやさしさ
この本のよいところは、筆者が安藤忠雄ばかりではなく、工務店、施主の側にもたったレポートをしているところである。建築家に頼むと言うことはどういうことかが、よく分かる。本の中に安藤忠雄と切り結ぶという表現が出てくる。これは、小住宅を造る場合でも同様である。工務店に頼むのとは全く違う体験である。いわば、建築家の美意識、工務店の施工の現実、何ができるか普通理解できない施主との思想、人生体験との戦いが起きるのである。更に、竣工後も建築家の思想が徐々に住み手、使い手に染み込んでくる課程も楽しむくらいでないと、やっていけない。
その点、安藤忠雄は正しい考えを、まっとうに主張してくる人であることが分かる。教会建築の肝要な点は、欧州での修道院、教会建築から学んだことを、実現することで、そのために全力をかけて施主を説得している。面白いことに、使っているうちに、安藤忠雄の建物はどうしようもないと思っていた人々が、けっこうよいものだと思い始めるのも、彼の正しさを証明している。しかし、冬でも暖房なし、雨風雪が入ってきてもよい(実際にはガラス窓をはめたが)という思想は、教会という建物の原点を追求していて、それを現在の日本で主張できる人というのは、すごいことだ。世界の安藤になれたのは、その姿勢であろう。
しかし、自己主張と同じくらい、施主や工務店への思いやりにあふれている人でもあることも分かった。植栽などを建物完成後に購入して寄付しているが、それで設計料がチャラになったという記述がある。(幸い、この建物で、安藤忠雄の名は更に上がったのだが)
読了後、その構造や、光の取り入れ方の図をみているうちに、ル・コルビュジエの後を継ぐのは彼かも知れないと思ってしまった。
気持ちのよい本であった。おすすめである。

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