あたたかな研究紹介書
そろそろ「老化」が気になりだすと読みたくなるようなタイトルですが、「研究の進め方、ありかた」を書いた本でもあり、「修道院という世界」をのぞかせてくれる本でもあり、「人との接し方」を考えさせる書でもあります。アルツハイマーの研究のために、なぜ「修道女」を対象集団に選んだのか。アルツハイマーの疫学、分子生物学的研究の解説から、こんな食事や生活がよい、と実際的な知識もたくさん盛り込まれていますが、なによりも、全体を通じて感じられる著者の真摯な態度、修道女たちのやさしさが、この本を、よりよく年をとるには「明るく、前向き」が大事、と語りかける温かいものにしています。原題のAging with Graceにもそんな温かさを感じました。
研究の途上、彼女たちとの交流の中で著者が教えられたこと。例えば、「「学歴が高いほど長生き」とのデータを説明すると、低学歴の人々は動揺するしかない。」という、研究成果の発表とそれを聞く被験者の心の問題。テストの際に「「・・できますか?」は良くない。「・・してみてください」と言う方がよい。プライドや恥ずかしさから、「できない」とは認めたくないものなのだから。」という配慮の必要性。こういった事は病気や障害の告知に際しても、いえ、日常の会話でも忘れてないでいたいことなのではないか、と気づかせてもくれました。
この本は、ある福祉系の大学で、神経生理学の講義推薦図書にもなっているそうです。病気や障害のある人に接する人に、その研究をする人にも目を通して欲しい本です。
トマトソースのパスタは健康に良い?
アルツハイマー病の研究対象が、ノートルダム教育修道女会という特殊な世界に限定されているので、「高齢者の健康問題」と「シスター」の二つのテーマが上手く絡み合った内容に興味深く読めました。 酒、喫煙に無関係で、規則正しい清貧の生活を送るシスターたちの健康を追跡調査する着眼点がまず素晴らしく、小遣い稼ぎの養鶏を機に疾学の道に進んだ作者を始め、シスターたちの入門の動機を含めた自伝が紹介されているので、研究者たる作者とシスターたちのキャラクターとやりとりにユーモアがあって、堅苦しくならずにいて読みやすい文章に好感が持てました。
シスターたちの食生活を紹介している後半では、トマトやスイカなどに含まれるリコピンが、シスターたちの身体機能と強い相関関係を示していたりと、示唆に富み実践できそうな話も参考になりました。
強い宗教心で結ばれたシスターたちの老齢に対する不安や悩みを、著者が柔軟に対処する姿勢も良く、本書が医学的な知識の解説だけに留まらないものを感じさせます。
巻頭にモノクロ写真で、本書に登場するシスターたちの写真も掲載されているので親しみが持てます。