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「10代からの言語学」というサブタイトルがついているとおり、中学生や高校生を読者として強く意識した、言語学の入門書、いや、その手前の「案内書」といった趣の本である。 大津由紀夫、上野善道、窪薗晴夫、今西典子、西村義樹、今西邦彦、といった、第一線級の言語学者が子供や学生の頃の体験談なども交え、おのおのが関わる分野についてわかりやすく解説している。 こういった企画は私も大賛成である。大学に進学する人は事実上、高校3年生で将来の大まかな進路を選ばねばならないのに、その頃に大学の学問分野の情報は貧弱である。中高生が読めるような入門書は実に貴重で、こういった本はあらゆる分野から出るべきだと考えている。そういった意味で5つ星をつけるべき企画だろう。 ただ、書き方にはすこしだけ不満が残るものがあった。こういった企画で大切なのは、1つにはその分野を選んだ学生自体の体験、2つめはその分野の意義、3つめは実例、4つめはさらに興味を持ったときの読書案内の4つだと思うが、すべて満たしたものはなく、1と3が中心になっている。体験談では、自分が学生の頃に面白いと思ったことを伝えるのに成功している人もいるが、どうも「今の自分」を抜けきっていない人も目につく。 内容のわかりやすさから言えば、個人的には上野氏(「うわの」と読むそうです)と窪園氏がよかったが、あとの方はなぜか専門用語の枠組みにとらわれ、単なる学問紹介になってしまったのがやや残念である(今西氏は完全に人選ミス)。中高生のために内容をほとんどかみ砕こういう意志を感じられないものはむしろ思い切って削るべき。また、最初にある大津氏の総論は言語学の紹介のほうがいいと思うのだが、「言語学者がどういった人種か」といった学者論を展開して、なんとなく違和感があった。あとで読むことになる文章を先に引用などされても、蛇足でしかないと思うのだが。 たいへん良い本だと思うが、全体的に学者としての自意識が先走って、言語学の紹介に徹することができた人が多くなかったのがすこし残念である。学生にとって書き手がどれくらい偉い学者なのか、など、おそらくそんなに大事なことではない。その点がすこし残念であった。 こういった本は、自意識を殺して、いかに読者を楽しませるかに徹するかがポイントになる。仲良しグループではなく、もっと読者本位の人選だったら長く読み続けられるものになったのにとすこし残念だ。