どんなつらいときだって音楽には貪欲なポール
発売当時、ファンは知る由もなかったのだが、この頃すでにリンダの体調がおもわしくなかったようです。レコーディングと看病でポールも苦労したらしいのですが、それでもアルバムは素晴らしいものに仕上がっています。前作に引き続きパワーポップ的バンドサウンド。今回はアコースティックギターの露出度が高く、アレンジもシンプル。それだけにメロディーの良さが際立つ曲が多いですね。ロック調の曲では、ポールのシャウトが、ほぼ生音に近い感じのミックスで処理されていて、鳥肌ものです。
シングルヒットした「Young Boy」は、明らかにジェフ・リンにインスパイアされたソングライティングだとは思いますが、例によって、ポールの手にかかれば、本家を凌ぐ出来になっちゃってますね。
そんな高い評価なのが不思議な佳作
発表され、聴いた時は“今回の新作はいい”と確かに思った。
人にも“ポールの新作は久々にいいよ”と確かに薦めた。
しかし全米チャートでも好成績を出し、巷の評判もウナギノボリになっていくのを見たり聞いたりするにつけ、次第にこう思いはじめた。
“そんなにすごい傑作かな、これ”
確かにいいアルバムである。僕も好きだ。ただポールを聴きこんできたファンからすれば、“当たり前のクオリティ”なのである。ポールへの期待する水準からすれば“並”である。
ただポールはあっちへ行ったり、こっちへ行ったりで“並”水準の作品もやれば簡単に作れるのに、なかなか作ってくれないのである。
ポールが自然体になれば、この程度の作品はいつでも作れることは、我々ファンはみんな知っている。この作品を高い評価をするというのは逆にポールを過小評価しているようにさえ思う。
ただこの人はとても頑固で意固地で実は素直じゃないところがあるのである。
そういうところも実は好きなのだけれど。