達郎恐るべし!!
山下達郎のア・カペラ「On the street corner」に出会ってから、もう四半世紀が経ちました。
当時、合唱関係者以外には「ア・カペラ」という言葉に馴染みがなかったわけで、まして一人で全てのパートを歌う「ア・カペラ」は非常に珍しい試みでした。 普通、どんなコーラスグループでもメンバーの声質は異なりますから、ハーモニーの響きを合わせるのは、結構難しいものです。ただ、達郎は、自分の声を4パート+アルファの声部を重ねて録音しているわけですから、当然良くハモリます。
人間の音域というものは、そんなに広くありません。4パートのコーラスを歌うとなると相当広い音域が要求されます。達郎はテナーですから、ベースは無理して出しています。でもそれなりに胸に響かせて雰囲気をかもしだしているのは、立派です。
今聴いている「On the street corner 3」は、第2作より、ドゥー・ワップの原点に戻りア・カペラの真髄を追求した物となっています。そういう意味においても第1作に近い感じがします。「STAND BY ME」のような定番も収録されており、大好きな懐かしの「GLORIA」も聴くことが出来、幅広い年代から曲を収録しています。
個人的には、最後の達郎のオリジナル「Love can go the distance」が秀逸で、これだけ聴いてもこの試みの素晴らしさは理解できると思います。
どの曲もノリがよく、聴き込めば聴きこむほど、細部までよく練られたアレンジとボーカルだと感心しました。「達郎恐るべし」ですね。
職人の創る音
使い捨ての音楽が氾濫する中、「本物の音」とは一体なんなのかわかりにくくなってきていると感じている方に是非オススメしたい作品です。
音を創っていく過程において、妥協が一切ない、まさに「職人」の技です。もちろん彼は天才でもあるのでしょうが、それ以上に地道な積み重ね、神経質なこだわりによる努力の人でもあるのです。重ねられた美しいハーモニー、ドゥーワップは鳥肌がたちます。今、流行りの日本の音楽の中では、ここまでプロに徹した作品に出会えることは、皆無といって等しいほどです。
唯一の当人楽曲の「Love can go the distance」はこれだけでも価値のある"超"名曲です。 本物指向の方はもちろん、流行りの消費音楽で満足している方に衝撃を与えてくれるでしょう。
リアルタイムで山下達郎を知らなかった私は、以前、邦楽においては最新の音楽以外興味がなかったものでしたが、山下達郎との出会いによって良質なジャパニーズ・ポップを求めるようになりました。この感動を同じように、若い世代にも味わって欲しいと思います。
リアルタイムで楽しんだ方にはアカペラで改めて山下達郎の素晴らしさを、そして「クリスマス・イブ」しか知らない方には本当の職人音楽を、このアルバムで。