時として「善」と「悪」の境目は限りなくグレー
この作品を語る事はすなわちビリー・ボブ・ソーントンを語る事だ。
本作で彼は脚本・監督・主演の全てをこなし、そのどれに於いても見事なまでに異才ぶりを放っている。
20歳年下のアンジェリーナ・ジョリーとの結婚~離婚ですっかり話題をさらった彼だが、ミュージシャンとしても一流でありその多才さには唯々脱帽させらる。実際の彼はこのDVDの特典映像が物語る通りの陽気で典型的な南部出身アメリカンの様だが、一旦演技に入ると驚異的な集中力でその役柄に没入してしまうらしい。
彼はその出演作のどれ一つをとってもワン・パターンな演技はしておらず、一体全体どの顔が本当なのかとこちらが考え込んでしまう程。
この作品の主人公カールと「アルマゲドン」の沈着冷静な管制官トルーマンが同一人物だとパッと観て判る人はそうはいないだろう。それ程演技に幅がある。
ここで展開される物語のテーマは非常にダーク。
少年時代に実の母親と不倫の相手を衝動的に殺してしまった知能障害者の主人公カール。
25年間施設に収容されていた彼も時を経て放免となる。
故郷に戻った彼はそこでかつての自分に似た境遇の少年フランクと出会い心を通わす様になる。
自分の特技を生かした職を得、やがて住民の間からも受け入れられる。
そんな平穏な日常が長く続くかに見えたが…。
撮影はビリー自身の故郷アーカンソーで行われ、キャストの中には彼の地元の旧友の名も連ねられている。
そう云った意味でもこれは色々な意味でビリーの「カラー」が随所に散りばめられた「私作品」でもあるのだ。
脚本も含めその一種独特の陰鬱なムードに耐え得る人には最後に大きな感動を与えてくれるヒューマン・ドラマ。
時として「善」と「悪」の境目は限りなくグレーだったりするものだ。
ビリー・ボブ・ソーントン
ビリー・ボブ・ソーントンが、監督、脚本、主演を務めるが、最初しばらく本当に彼が主演をしているのか、確信が持てないほど容姿が異なっていたのには驚いた。内容について特にないが、もう少し何かあっても良かった気がした。ラストの出来事は必然だが、ありきたりと言ってしまえばそれまでだ。
J.T.ウォルシュが、いかにも嫌な奴を演じていて、この映画でひと際輝いていた印象を持った。ロバート・デュバルも出ている。