胸一杯になる優しさと懐かしさを届けてくれる歌
今や邦楽を語るには、はずすことのできない重鎮になった陽水が15年前にリリースした曲が本作だった。デビューから世間を痛烈に風刺するフォーク曲や「ジェラシー」「リバーサイド」のような大人の哀愁を表現した名曲を書いたかと思えば90年代に、誰しもが体験した淡い少年の心を、実に巧みにくすぐる名曲を作ったのは流石という他無い。自分は、生粋の東京育ちのため中々、同名映画や詞で描かれるような瑞々しい自然を懐古するのは困難だが、それでもコンクリートジャングルの合間の池や川の辺で魚を釣ったり、或いは祖父母の田舎で体験した事等を、胸しめつけんばかりに思い出させてくれる曲は、本曲以外早々見つけられない。今は、殆ど着なくなった短パンで遊び、時の流れは今より3倍近くスローに感じた。
また季節的には盛夏というよりは、秋の気配を感じる晩夏をテーマにしている。名曲「夏の終わりのハーモニー」と同じ設定だが、この晩夏こそが何とも現できない日本人だからこそ理解できる哀愁感を見事に湧き立たせる。
そしてこの時既に円熟味を帯びた渋い陽水の美声が、このノスタルジーと哀愁をテーマにした主題と見事に調和している。
老若男女問わず誰もが体験して来た、蒼い幼少期を思い起こさせ、幾度季節が巡ろうとフレッシュな感動を与え続けてくれる名曲。