良質の佳作
二十世紀中頃、エネルギーが石炭から石油に代わり、多くの炭坑が閉鎖されて、その炭坑によって栄えていた多くの町があっと言う間に廃れていったというのは、日本でも北九州などを中心によく聞かれる話ですが、この『ブラス』はこのような炭坑閉鎖に伴なう町の衰退を、イギリスバージョンで描いた映画です。 舞台となるのはイギリスの小さな炭坑町。その町には炭坑で働く労働者達で結成された伝統あるブラスバンドがあったが、炭坑の閉鎖によって収入を失ったバンドのメンバー達は生活に困窮し、ブラスバンドの活動が困難となっていく。そんな中で、ブラスバンドに全てを捧げる指揮者と、新しくこのバンドに入った主人公の女性トランペッターは、何とかこのバンド活動を維持しようと奮闘するがその努力もなかなか実らない。そして何よりもこの主人公にはバンドのメンバー達には決して言えないある秘密があった・・・
大まかに書くと以上のようなストーリーなのですが、この映画には一応主人公的なポジションの女性はいるものの、本当の主人公はこのバンドに参加しているメンバー全員、そしてこのバンドを抱える町全体なのだという気がします。実際、映画最大の見所は、生活に困窮している中で、バンドとそれぞれの暮らしとの狭間で揺れ動いているメンバー達の心の葛藤でしょう。
スケールも決して大きくはないし、大ヒットしたというタイプの映画でもないのですが、その質の高さは良質の佳作といえるでしょう。