人の心に踏み込むには、それ相応の資格がいる。
第9巻では、シロッコに惹かれるレコアを中心に物語が展開しており、シャアの女運の悪さが伝わってくる作品であった。『1st』ではララァを目の前で亡くし、『Z』ではレコアに責められ、人の心に土足で踏み込んでくるカミーユに殴られる。元カノであるハマーンはアクシズを率いており、ジオン再興を目論んでいる。悲惨な女関係である。まぁ、悲惨になった理由はシャア本人にあるので仕方ないが・・・。シャアは自身の器量以上のものを次から次へと背負い込むので不幸になっていく。彼のニュータイプ能力はアムロやカミーユ、シロッコ、ハマーンより低く、愛機であった百式もキュベレイやジ・オに比べると性能が劣る。それでも彼は信念と欲求のために戦い続ける。日本的な「負けの美学」という概念を理解できない人の目には、その姿が負け犬のロリコンとしか映らないだろう。時代の流れに抗うその姿は一見の価値があると思う。
それにしても、ヤザンという野獣を見事に乗りこなしてみせるシロッコはさすがであった。自分のことを天才というだけのことはある。ただの上司と部下という関係ではなく、彼らは意外と性格が合っているように見えた。静と動、冷と熱という全く異なる雰囲気を放つ2人だが、自身の欲求には素直に行動するという共通点がある。また、シロッコは作品中最強のニュータイプの1人であるし、ヤザンの戦闘力はおそらくオールドタイプ最強である。人並み外れた能力を持つ2人であるから、友情とか信頼などとは異なるもので繋がれた関係であったように感じる。
なかなか興味深い人間関係が収められた1本だったが、正直少し退屈だった。☆は3つぐらいが妥当であろう。