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ドヴォルザーク:交響曲第8番

ドヴォルザーク:交響曲第8番

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ドヴォルザーク:交響曲第8番の解説

   20世紀を代表する名指揮者の1人ジョージ・セル(1897-1970)の死の3か月前、生涯最後のレコーディングにして、ドヴォルザーク「第8」最高の演奏として語り継がれるであろう名盤。

   この演奏からまず伝わってくるのは、あたりを払うような威厳であり、作品の本質を奥底まで見つめようとする鋭い視線である。これほど畏怖(いふ)すべき演奏は、アーティストがニコニコと笑顔を振りまきがちな現代にあっては、まずお目にかかれない種類のものではないだろうか。

   元来ドヴォルザークは、心優しく、愛らしいたくさんのメロディを無限につむぎ出し、人情味たっぷりの、ひとなつっこい作品を生み出すことにかけては天下一品だ。しかし、セルはドヴォルザークの人当たりの良さに安心し甘えてしまうことを決してしない。緻密で彫りの深い表情、楽器間の完璧なバランスを保ちながら、じっくりと歩みを進めていく。

   絶頂期のクリーヴランド管弦楽団の音色の美しさも特筆すべきもので、オーケストラ全体がまるでひとつの楽器のように、ふんわりまとまっているとでも言おうか。たとえば第2楽章。緊密でありながらオーケストラ全体が柔らかく呼吸し歌い、やがて思いのたけを吐露するような激しさに達する。この楽章に内在する悲しみの核心をつかみながらも、誇張も感傷もない。しみじみとした終結部は何度聴いても大きな感動に襲われずにはいられない。

   第4楽章は、ともすればノリノリの浅薄な演奏になってしまいがちだが、セルの棒にかかると、実に格調高く、またスケールの大きな変奏曲として、眼前にその威容を現わす。

   さらに、旋律の歌わせ方の品の良さ、抑揚の見事さ、造型感覚の確かさは無類のもので、第1楽章、第3楽章、そして併録された2つのスラヴ舞曲など、驚くべき完成度に光り輝いている。(林田直樹)

ドヴォルザーク:交響曲第8番の曲目リスト

  1. 交響曲第8番ト長調op.88「イギリス」
  2. スラヴ舞曲第10番ホ短調op.72-2
  3. スラヴ舞曲第3番変イ長調op.46-3

ドヴォルザーク:交響曲第8番の商品レビュー

5.0 憂愁に満ちた感傷的な味わいと、華麗でダイナミックな表現とのコントラストが鮮やかな名盤
ドヴォルザークの交響曲といえば、第9番(新世界より)があまりにも有名になってしまった嫌いがあるが、この第8番は、それに勝るとも劣らない名曲中の名曲だ。「家路」のメロディで、誰もが子供の頃から聴きなじみ過ぎてしまった感がある第9番と比べると、第8番は、まだ聴き込まれていない新鮮さが魅力であり、今では、コンサートでも、第8番の方が演奏される頻度が高くなったともいわれている。  

ドヴォルザークは、クラシックの作曲家の中でも頭抜けたメロディ・メーカーの一人であり、その作曲家生活の絶頂期に創作されたこの交響曲第8番も、第1楽章から第4楽章まで、全曲がスラヴの民族色豊かな美しい旋律で溢れている。  

私は、この曲が大好きで、9枚のCDを持っているのだが、率直にいうと、これだけ美しい旋律に溢れた名曲になると、聴き比べれば、たしかに、指揮者によるアプローチの違いはあっても、曲自体にそうしたさまざまな解釈を包み込んでしまうだけの魅力があり、全てそれなりに聴けてしまうのも事実なのである。 

そんな中で、あえて1枚を挙げるとしたら、セル指揮クリーヴランド管弦楽団のこのCDだろう。セルは、ここでは、「正確さと機能美を追求する完全主義者」という必ずしも肯定的ではない世評を覆すような、抑制を排した感情豊かな演奏を繰り広げており、スラヴ的な憂愁に満ちた感傷的な味わいと、熱く華麗でダイナミックな表現とのコントラストは、この曲の代表的名盤の名に恥じない鮮やかなものだ。  

ちなみに、セルには同じ楽団との1958年録音盤もあり、音質こそ劣るものの、そこでもこの1970年盤に引けを取らない名演奏を披露しており、いずれも、ケルテス指揮ロンドン交響楽団を凌ぐ出来を示している。  

なお、この1970年盤は、「21世紀の名曲名盤」(2004年音楽之友社)の同曲中、カラヤン指揮ウィーン・フィル盤に次いで、第2位にランクされている。      
     

5.0 正確無比のドヴォルザーク
このドヴォルザークの8番という交響曲は、アマチュアの演奏団体でも人気の高い曲ではあるものの、有名な9番(チューバの出番と弦楽器のアンサンブルのために敬遠されがち)に比べて構成が緩く作られており、これはという演奏にめぐり合わせることが少ない。必ずどこかしらくすっと笑わせてくれるような場面にでっくわす。アンサンブルもテンポもまちまちで、ベストはどんなものかと悩んでしまう。

私もこの曲はうんざりするほど買ったし、うんざりするほどへんてこなものも中にはあった。そして、マトモと呼べるものは今のところ3つしか知らない。1つはケルテス/ロンドン響、もう1つはワルター/コロンビア響、そして最後が言うまでもないこのセルの盤だ。ワルターが歌心を極端に大事にしたのに対して、ケルテスとセルは曲の自然体を見つめている。その自然体というヤツが再現芸術においては非常に難しい。だからこそ破綻が生じやすいし、それゆえにいろいろ起こる。もしそれが自然体にうまくいったら、1つの芸術行為として、讃嘆されるべきものである。

さて、今回は星5つ以上につけてもよいくらいのおすすめ盤である。「自然交響曲」と題されることもあるこの交響曲、いかに自然にと考えてもなかなかうまく行くものではない。オーケストラと指揮者の呼吸ももちろんだが、指揮者の読み込みも大事だ。それがセルにはできている。かといって、頭でっかちな演奏を聴いた時にしばしば起こる「アカデミック・ヘッドエイク」も生じない。つまり、すんなり聴けるというのだ。少しテンポが遅くはないか、という向きはあるかもしれない。確かにケルテスほどの標準速度っぷりではない。だが、セルはどの旋律をどのテンポで歌わせるかを明らかに知っている。もちろん巨匠セルの晩年様式という理由から、その遅さを根拠付けることはできるだろうが、晩年であるからこそ見切っているのだと言えよう。ぜひ持っておきたい1枚だ。

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