これはもはや、オペラの域
ニュージーランドの監督:ピーター・ジャクソンが今まで製作は不可能と言われ続けてきたものを可能にしました。その作品がJ・K・トールキンが書いたファンタジー「Lord of the Rings(指輪物語)」です。原作は長大で巻数も9巻あります。その大作を見事にまとめ作り上げました。そして音楽を担当しているのが、ハワード・ショア。彼はこの映画に異様なまでの意気込みを見せています。いままでサスペンスやホラーしか書いていない彼にとってファンタジーなんて書けるのだろうかという不安があったそうです。ショアは幾度となく原作を読み漁り、イメージを高めていったと言われています。3部作構成の映画の為に作られた音楽は約9時間となりました。一つの作品に約3時間ですから、さぞかし大変な仕事になったのでしょう。 まずはこの第1作目の音楽を紹介することにいたしましょう。まず見事な演奏者から。今回この旅の仲間だけ二つのオーケストラを使っています。監督の母国、ニュージーランド交響楽団とイギリスの名門、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団です。合同オケという事ですから100人は余裕で越えているのでしょう、凄い編成ですね。あとはロンドン・ヴォイセスと言われるイギリス名門の合唱団。そして指揮には作曲者本人があたっています。
曲は全部で18曲あり、シンフォニック的楽章(オーケストラや合唱の)は17曲、最後に収録されているのはエンヤが歌う主題歌。ここで主にシンフォニック的楽章を取り上げます。映画の冒頭、指輪の歴史について語られる場面から曲は始まっていきます。弦楽器のトレモロと合唱のうなり声みたいなものがいいバランスで聞こえてきます。やがてホビット族の村の音楽が聞こえてきますが、この曲のメインテーマをホイッスルが奏でているんですね。一瞬、ケルト音楽的味わいが感じられることでしょう。どの楽章も合唱を効果的に取り入れています。かなり使い方が上手いです。合唱を使うことによって神秘的になるところも魅力的です。「ロード・オブ・ザ・リング」のメインテーマも様々な楽章で登場します。登場の仕方は様々ですが、多いのは金管楽器(ホルンのヴァリエーションとトロンボーンなど低音楽器のヴァリエーション)が奏でることでしょう。映画音楽って一言では言えない!これはもうオペラですね!
ストーリー性のあるサントラ
物語に沿って曲が収められているので、聴いていると実際の映像が目に浮かんでくる。起承転結のはっきりした内容だと思う。
明るい光と豊かな緑、そして楽しげな雰囲気に包まれたホビット庄から、指輪をきっかけとして暗く重苦しい展開に進むところはサントラでも印象的。しばらくは、ホビットの村の美しい風景から離れなければならない。指輪を託されたフロドのように、恐怖や緊張、不安、そして突然の別れなどハワード・ショアによるスコアは、旅の中で体験する様々な出来事を描き出す。オーク達が登場するシーンの曲は、どこか居心地が悪く不安な気持ちになる。CMでもよく耳にした疾走感のある曲は、そんな気分を切り裂いてくれる。エルフの女王が登場する、後半の神秘的な曲も印象深い。
そして最後の、一行の離散。
どれほどの困難や絶望が待ちうけているのかわからない。だがそのテーマ曲は、力強さに溢れている。ただ滅びの山へ向けて、一歩ずつ二人は進んでいく。神聖な響きがとても美しい、少年の歌声も魅力的。
エンヤの主題歌が、旅の幸運を静かに祈っている。