もともと高品質な内容の作品
旧版は衛星放送で観て、字幕ががさつながらよい作品に感じられていました。このDVD新版は、旧版に比べ良くなっている点が多いと思います。
クリンゴンの出撃理由、バルカンの情況、本部の様子、アイリーアの背景、V'GERボールの知能、デッカーの立場、V'GERの全体像、V'GERへの橋がよりわかりやすく、印象的になりました。解説でふれられていますが、上映時間制限が旧版制作に苦悩をもたらしたようです。しかし、そうした萎縮のたねをものともせず、これほどの高品質な内容を映画にしています。しかも「2001」「未知との遭遇」のスタッフやシド・ミードまで関わっているのですから、もともと優れた作品と言えるのではないでしょうか。
解説によるとTOSの初放送の評判はさっぱりだったそうですから、これだけの内容を繰り返し扱う意地もわかる気がします。
解説から、ロッデンベリーがブラッドベリと肩を並べるストーリーテラーであることもうかがえます。
日本語吹き替えも、翻訳と声優の発声に少し難を感じるところはありますが、魅力的です。
壮大なSF「エピック・ファンタジー」
なぜかトレッキアンの間では評価が低いみたいですけど、私はスタートレック映画の中では一番好きです。ロバート・ワイズらしい壮大な雰囲気が「スペースオペラ」ではない、「SFサーガ」のような雰囲気をもっているところが。
まるで破壊神のような力を持つ、恐るべき敵の正体を探るまでのサスペンス、びっくりもののその正体。
「敵と戦い、ぶっつぶす」ことが主眼の多いアメリカ映画の中にあって、この作品はメカニカルな世界観の中でありながら、「愛」によってお互いを分かり合える感動のエンディングが良いです。
ロバート・ワイズって「地球の静止する日」という名作でも、「寛容」と「愛」を描いてましたが、この作品でもその心を忘れていない。
ちょっとクルーたちのコスチュームが'50年代的ですが、これはこれで良い。
なお、これとソックリなストーリーが、実は「宇宙大作戦」(STARTREK)の中にありましたが、「宇宙大作戦」ではカーク船長が、敵をうまくだましてやっつけちゃう。
この映画とはまるで違うエンディングが、スタッフの考え方の違いかと思います。
一長一短、どちらにしても不完全な出来
今回、CG技術の導入とやらで当時は出来なかったことを色々と補足していますね。サンフランシスコの光景などは格段に良くなったと思いますし、いまいち具体的な猫像が不明だったビジャーの姿やコンタクトの仕方が明らかになったのはいいと思います。しかし、やはり技術レベルの差はそうした継ぎはぎをどうにも目立たせてしまっている様に思います。人形のジャバ・ザ・ハットやヨーダがCGになってからの彼等と同じには見えないのと同じことです。またそれ以前に、現在の技術としても低レベルなシーンが幾つもありました。そんなものを挿れる位なら元の儘が良かった、と判断される人も多いのではないでしょうか。ビジャー内部の光景が若干カットされてしまったのも残念です。確かにあのシーンはだらだらとちょっと間延び気味でしたが、あれだけ見事なSFXビジョンは映画史上そうそうないものだと思います。是非ともフルバージョンで残して欲しかったです。
また、幾つかの台詞も切り張りされていた様ですが、実の所人物描写が深まったと見るべきなのか、単にクサい台詞廻しがまた上乗せされただけで、前の方がまだしもマシだったと見るべきなのか、評価し難いところです。元々のシナリオがもっと練られていれば良かったのですが。ともかく、この監督が『深く静かに潜航せよ』を演出したのと同じ人だとは思えない、と云う印象は相変わらずでした。以前のバージョンのDVDって出ないんでしょうか。