当時の日韓関係を赤裸々に描く問題作
72年大統領選で朴正煕に惜敗後、73年日本滞在中の金大中氏がKCIA(当時)に誘拐された。当時日本中が衝撃を受けた事件の映画化。その後金大中氏は80年の光州事件の責任を取らされ死刑判決を受けるが、98年に大統領に就任。2000年にノーベル平和賞を受賞、2002ワールドカップ開会式で挨拶したのは記憶に新しい。70年代当時の日本の風景が見事に再現される。ケンメリやハコスカなど当時の名車が当たり前のように走り回り、公衆電話などのグッズが再現されているのには関心した。また差別意識や韓国人の感情が赤裸々に描かれ、事件発生時ボディガードの筒井道隆(在日2世)を公安刑事が何度も口汚く罵倒する。韓国語がわからないのかとののしられ、日本語しか話せない筒井のジレンマが2世の複雑な心境を表す。彼は日本人女性と交際しているが、母は兄を殺した日本人は絶対認めないと恨(ハン)を公然と口にする。
陸自情報将校役佐藤浩市の韓国女性への淡い恋心も描かれるが、風呂無しの安アパートで、彼女がタオルで体を拭く短いシーンがある。彼女は韓国在住時に民主化デモで逮捕され、拷問された傷痕が全身にある。それを人目にさらすことを恥じ、銭湯にも行けないことを示唆し、民主化を求める民衆を弾圧した当時の朴独裁政権の非情さを訴える。
金大中事件の真実を解明する緊迫のストーリーが本筋だが、今の友好ムードから想像できない当時の日韓両国の感情がリアルに描かれる。お互いの過去をきちんと理解してこそ友情は築かれる。韓国との真の友情を築くためぜひ観てもらいたい1本。
混沌のなかで生きる男の姿
実際にあった未解決事件の映画化ということで、様々な見方がある
と思う。しかし第2次大戦の記憶もまだ風化せず、安保闘争の混乱
が終息しつつあり、高度経済成長へと向かう日本。そんなザワザワ
とした時代の空気を生々しく感じさせてくれた。
原田芳雄演ずるジャーナリストの「人間、煎じ詰めれば上から入れて下から出すだけみたいなもんだけど、それでも生きているのにこ
したことはないんだよ!」(うろ覚え・・)というセリフが印象的。