名作。
ここまでキャッチーなのに中身のあるアルバムはそうないだろう。
うまいとは口がさけてもいえない彼のラップは、
フロウではなくリリックで聞かせるタイプ。
自虐ネタもちょっときつそうな冗談もあり、
なかなかきついなぁと何度も思うのだが、
それを天才的としかいいようのない展開と
一聴必殺のキャッチーなトラックに乗せたらこれほど魅力的な曲になり、
魅力的なアルバムになるのである。カニエは最後の長尺の曲で、
JAY-Zまで引っ張り出してきてそれまでの生い立ちを語る。
そこで彼は
「あいつもこれだけA&Rの連中に足蹴にされたら、
自分のためにいいトラックをとって置こうなんて思わなくなるだろうぜ」
と言われていたとラップする。
そこまで言わなくてもなぁ、と思わず苦笑い。
面白いです。
星五つ。
今年のHIP HOPの台風の目
JAY-ZやTALIB KWELIとの仕事を中心に多忙化しているため、去年くらいからマニアでなくても名前くらいは知っていたことだろう。ライバルのJUST BLAZE同様、レトロな60年代、70年代のソウルを中心に高速回転させたネタ使いが主流で、最近のHIP HOPファンのウケが良いと共に、ソウルトレイン世代にも懐かしさを感じさせるという独特な手法を用いるプロデューサーだ。
勿論近年のプロデューサーは、昔の名曲の一部を使って新たな命を吹き込むということは多様化している訳だが、昔の雰囲気をそのまま今風のヒット曲に乗せてしまうというのはなかなかの荒業だろう。もっとも、JUST BLAZEと違い、最近ではシンガーへの提供が目立っていて、アリシア・キーズをはじめとして、ジャネット、ブランディ、モニカなどへの提供から、ロックバンドのMAROON 5のREMIXまで手がけるほど幅広くなっている。それらの作品はどれもレトロなソウルのエッセンスを現代に蘇らせ、そもそもブラックミュージックとはどんなであったかを思い出させてくれる。
この中でもジャネットやブランディの作品にはラッパーとして参加している訳だが、気楽で素人っぽいノリがなかなか良い味をだしている。
だが、アルバム全体を彼のラップで埋め尽くされたらどうだ。終始ダラダラとしたムードが漂い、せっかく上手いネタ使いのところにもメリハリのないライムが炸裂し、引いてしまう。むしろ、ソウルシンガーをゲストに招いたり、語りに専念するような曲の方が秀でていて、意外にもベストトラックは最後のLAST CALL。10分を超える長編ながら様々なブラックミュージックが集約されていて手堅い作りだ。
ラッパーとしては今ひとつだが、当然全曲自らプロデュースしている訳で、楽曲としてはどれも傑作。近々彼の全面プロデュースでデビューするジョン・レジェンドにも期待がかかる。