エマニュエル・ベアールのための作品
ひとときの楽園で癒され始めるが、あっけなく終焉を迎える。エマニュエル・ベアール演じるオディールが17歳の少年を受け入れるまでの心の移り変わりが見事だったと思う。
仏映画らしい一枚の絵。
ドイツの侵攻により、息子と娘を連れてパリから逃げている美しい未亡人オディールと(ある理由があるのだが→)17歳という年齢の割には生きる力にたけているかと思えば、字を読むことも出来ず突然精神不安定ともいえる状態に陥る青年イヴァンとの閉鎖されたある意味「楽園」での関係を軸に物語りは進む。オディールは中学生ぐらいの息子とまだ小さな娘を連れ、夫は戦死している為「優しく教育者たる母」「強く威厳に満ちた父」の両方を演じようと肩肘を張り続けている。このエマニュエル・ベアールの演技が秀逸。美しく、頑ななまでに子供達には母であり父である自分を演じ続け、知的な持ち味を鎧のように纏っている。
ご覧になれば分かると思いますがイヴァンの「爆発するかのような暴挙」。かと思えば好いた女性に急に「妻になってくれ」と手をとるような純粋な子供のような面、笑顔、存在感があり明るいのに何故かふっと「かげろう」のような儚い印象を与える。無垢さと相まって圧倒的な存在感。
そして、息子役の少年も母と兄のように慕うイヴァンの間で意外としっかりと年頃のインテリ少年らしい個性を発揮していて物語りのスパイスの一つにはなっている。彼もまた父親代わりたらんとしていたのだろう。
完成された一枚の絵のような作品です。最後を予感させつつ、その期待を裏切らずふっと切れる仏映画の特徴もしっかり踏まえている。「かげろう」という日本語タイトルはぴったりだ。ほんの週数間のユメ物語を物悲しくも美しい音楽と共に・・・途中で切らずに一気に味わいたい作品です。
「エロティックドラマ」と書かれてしまっていますが、基本はストイックとプラトニックが混ざり合った複雑な感情を軸に物語が進むので、こうした作品は「苦手」と思う方も抵抗無く見て貰えると思います。余談ですが、DVDのメニュー画面が物哀しくもお洒落ですよ、ご覧になって確かめて下さい。