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ションヤンの酒家

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ションヤンの酒家の商品レビュー

5.0 変わりゆく中国下町での「生き様ショー」
 ヒロインを演じた陶紅は歌手の一青窈に似た
なめらかで艶のある美貌で屋台の女主人を演じ切っています。

 ヒロインが束の間恋に落ちる中年男性が
観客の目から見て外見的にも最終的に人格から受ける印象にも
あまり魅力が感じられないのは残念ですが、
気丈かつしたたかに振舞っていても
そうした男性にある瞬間寄りかかってしまうのは
女性ゆえの脆さということでしょうか。

 実際、この映画に登場する男性はこの中年男性ばかりでなく
かつて家庭を捨てて別の女性に走った父親といい、
身勝手でヒステリックな妻に尻にひかれている兄といい、
麻薬に溺れ更正施設に入っている弟といい、
ヒロインの計略に上手く乗せられる住宅管理所長といい、
その息子の精神を病んだ青年といい、
どこか根本において頼りない人格を与えられています。
最後に現れる青年画家にしてもその職業からして生活力に欠いた印象を残します。
ヒロインが母親の様な愛情を注ぐ幼い甥の将来にも不安な予感が漂っています。

 女性登場人物に関して言うと
「生活秀」(生き様ショー)と題された原作小説で
ヒロインと対照的な生き方をするやや軽薄なインテリ女性として登場する実妹の挿話が
映画では丸ごとカットされ、
変わりに妹的存在である使用人の少女との挿話が深く描かれていました。
しかしこれはこれで良い改変だと感じました。
 泣いてばかりいてヒロインに叱咤されていた気弱な少女が
ヒロインの差し向けで不幸な結婚をしたにも関わらず
訪ねてきたヒロインには事実を押し隠して明るく振舞うくだりでは
正にサブヒロインと形容するに相応しい重みを備えています。
 
 立ち退きを間近に予感しつつ今日も店頭に佇むヒロインばかりでなく
無責任な兄夫婦の下に帰って行った幼い甥や
結婚に破れ身ごもったまま店に戻ってきた少女と弟のその後など
敢えて想像の余地を残す形で終わらせた点は見終わった後に余韻を残し味わい深いです。
5.0 永遠の反目
街の雑踏の中、決して演じたものではない寂しげな横顔を見ることがある。決して正面からその顔を見ることは無い。女は誰かを意識しない時にだけ、自分の闇を覗く。
心の中に空いた満たされないままの穴。ふとした瞬間、その深い穴から冷たい風が吹き上がってくることがある。その風に吹かれた瞬間なのだろうか。女は、寂しげな顔をする。
この女の闇に、自分の存在価値を見出すとき、男は女に本当の色気を感じる。

俺が満たしてやる、と。

だれにでもあること、だが、そんなことが多い女性も少ない女性もいる。
ションヤンは寂しさの多い女性である。
冷たい風に吹かれながらずっと誰にも頼らずに生きてきた。

彼女の満たされない部分を見つめ続ける、男。ションヤンの心が少しずつ動き出す。
もう失敗したくない。どんなことがあったってもう傷つく少女じゃない。だけど、怖い。
やっと、心を開いたションヤンに何が起きるだろうか


永遠の反目。それが男と女。
求めても得られなかった幸せの墓場。それが心の闇。
5.0 真実は何処にあるのか。
考え抜かれた優しい言葉の浅薄さと不実さ、一方、不意に口をついた言葉に込められた真実の奥深さ、そして残
酷さ。人の行いに伴う心理の複雑さと単純さ。様々な心理や思惑のせめぎ合いのなかで、物語は堅牢なリアリテ
ィを保っている。巨大な高層建築の林立する風景と、都市開発の波に呑まれ消えゆこうとしている古い家屋の密
集する低い町並みとの対比が象徴するような二つの世界(エレメント)の狭間で、揺らめく心の機微が繊細に紡
ぎ出されてゆく。
二つの世界を繋ぐロープウエイの箱の中で、ションヤンの弟が「アメイのことが好きだった」と言った言葉が幾
ばくかの真実を含んで、ションヤンの心に重くのしかかるとき、家を取り戻すためという自分の打算で別な男へ
嫁がせたことへの後ろめたさを取り繕うように言い訳をするションヤン。けれどアメイに対して感じている責任
の重さも、アメイに幸福になってほしいという願いも、周囲の誰よりも切実に感じているのはションヤンであろ
うということを見逃してはならない。都会の場末でいろんなものを背負い込んで、張りつめた思いで独り生きて
きた女の現実を見据えるまなざしがそこにはある。
自分の店先に腰掛けている彼女を描いていた若い画家に「明日もここに来ますか?」と尋ねられ、「私はいつも
ここにいるわ」と答えた自分の言葉に、思いがけず涙が頬を伝うとき、変わってゆき自分から去っていくものの
あるなかで、自分一人が同じ場所に取り残される孤独感に苛まれつぶれそうになる。自分も幸福になりたい、な
れるかもしれない、独りで生きることの厳しさから逃れて安らげる場所が欲しい、そんなことを夢見た束の間の
恋の幻影に傷つき乱された心を持てあましながら、店先に座って煙草をくゆらしている。そんな映画である。
4.0 現代中国を生きる人間模様
家族といることの幸せ、家族であることの不幸せについて考えさせられた。

恐妻に逆らえない兄、麻薬中毒の弟と魅かれる雇い人(福原愛似)、主人公を想い店に通いつめる中年オヤジ、浮気して家を出た父親。大変貌を続ける重慶の街で再開発の煽りを受けながら必死に生きる主人公(バツイチ、流産経験あり、一青窈似)の人間模様を描く。

主人公は生きるために試みる。文革で奪われた家を取り戻すために音信不通の父親とよりを戻し自分名義にする。役人に賄賂をわたし家を取り戻す。その役人の息子のところに雇い人を嫁がせる。兄や弟との生身のやりとり。中年オヤジとの恋愛。

物語に織り込まれたエピソードが完結し、直前に迫る再開発の及ぼす生活の変化(立ち退き)と新たな出会いとを示唆しながら、物語は終わる。主人公が流す涙。それはこの物語のもうひとつのテーマである「子供」を巡る涙なのだろうか。

古びたストーリーではあるがよく練られている。変貌する重慶の街を走るロープウェイと主人公の生活の場である屋台街の対比が見事で、現代中国の空気を感じる。あとこの監督絶対足フェチ(笑)。

冒頭、主人公の部屋のシーンで、テレビに映画「ゴースト」の有名なシーン(ろくろまわすやつ)が写る。監督がファンなのか。

4.0 鴨の首美味しそう ビールに合いそう
舞台は北京でもない上海でもない都市「重慶」
にぎやかな屋台街の一軒を切り盛りする
ションヤンを中心に様々な立場の中国人が登場します。

屋台、家鴨料理、自営業、麻薬中毒、一人っ子、血縁、
自殺未遂、精神障害、文化大革命、教育費、愛人、都市開発、
田舎、都会などなど、現代中国のキーワードがいたる場面に。

屋台を女手ひとつ(+手伝い)で続けてきただけあって
ションヤンは努力家で誠実、かつ気性の激しい性格で、
独身ながら女と母の顔を持つという色鮮やかな女性です。

私は中国の屋台の温もりを思い出しながら、
ションヤンのような女性がきっと中国の下町のどこかに
いると確信しています。
下町が喪失すれば、このションヤンのアイデンティティは
あいまいに、街の表情は消えうせてしまうのではないでしょうか。
そんな寂しさが残る作品です。

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