ポジティブ
「My Life」は歌い出しが『やるせなさ』を上手く表現していたので、ネガティブな方向の曲なのか、と最初思った。しかし、最初に空の様子や穏やかさでそんな感じを表現したのは、後からこみ上げてくる『前向きさ』を際立たせる為ではないか。
気持ちを曲に添わせると、心地よく共に高揚していく。
最後の締め方などは爽快感さえある。このくらいの年齢の男性には、こういうスタンスでいて欲しいと思う。
声の出ていなさがちょっと辛いので星は4つだが、これをもし昔の徳永英明の声で歌えていたのなら、もっと完成度は高かったはず。今の声でもここまで思わせるのだから。
2曲目の「僕が僕だけの救世主」もいい。いつも徳永英明にある『詩の固さ』が完成度を下げてると言えなくもないが、これも勢いがあって『陽』な曲。こんな風に、難しい事を言わず、闇や不安を吹き飛ばすような曲も作っていって欲しい。きっと、徳永氏は闇や不安を知っているからこそ、それと逆にあるものをきちんと作れると思う。
「君と歩いていくんだ」はこの一枚には似合わない曲だな、というのが正直な感想。くどいしあまり印象に残らない種類の曲だ。もし、何かをきっかけに徳永英明の曲から離れてしまった人がいたら、聴いて欲しい。ここには新しい一歩のような前向きさがある。
あの徳永らしさが帰ってきた
J-POPを聞き始めた頃、徳永の歌が好きだった。
輝きながら、恋人よ、壊れかけのRadio、
そんなバラード群はもちろん、夢を信じて、セレブレイション
といった高揚感のあるナンバーも好きだった。
でも、一時期、妙に歌い方を崩していた徳永が嫌いだった。
まるで楽譜通りに歌詞をあてはめず、
ねじれた声で歌うことが自己表現であるような、そんな歌い方に違和感を覚え、彼の歌から距離を置いていた。
そんな中、ポリープの手術や移籍などの苦難を経てリリースされた
セルフカバー集「カガヤキナガラ」を聴いて、再生の予感を感じた。
そして放たれた今作。美しいメロディーと、素朴な歌声。
あの透明感はそのままに、ややハスキーさを増し、
より深みを感じさせるようになった歌声。
僕の好きだった徳永らしさがやっと帰ってきた、と感じた。
日本屈指のボーカリストの再生を、確実に感じた一作。