稀に見るその乾いた映像美
日本が世界に誇る撮影監督宮川一夫さんのカメラがとにかく息を呑むような美しさ。ちょっと信じられないくらいに冴え渡っています。 雷蔵は勿論、長門裕之、三国連太郎、船越英二、岸田今日子、宮口精二、あげくは中村鴈治郎に杉村春子などなど、もはやこれ以上は望めないというくらいの大物俳優たちによる怒涛の競演です。 しかもこれほどアクの強い俳優さん達が、決してお互いのよさを打ち消すことなくさりげなく自己主張しているところに監督の確かな力量が伺えます。これがデビューの藤村志保さんも、決して美人とはいえないものの、かえってその普通の人っぽさが作品に奥行きを与えるのに大きく貢献していると思います。ただ、この人の声だけは、やっぱりデビュー当時から印象的だったんですね。しかし市川監督は、(周知のことですが)どんな感動的な題材を扱っても、決してむやみに観客に涙を流させる、というような演出をどうもなぜか意図的に避けるタイプの人のようです。例外は"ビルマの竪琴"くらい。そのため、どうも痒いところにいまいち手が届かない、と感じる観客も多いのでは? この作品も、監督の世界にある程度通じている人でないと満足はし難いかもしれません。 でもジャケットも超シブイし、豪華ブックレットつきで、この値段の値打ちは間違いなくあります。
一説によると、松本幸四郎主演でこの作品の前に製作されたテレビ版"破戒"のほうがもっとすごかったらしいです。ぜひ見てみたい。