小悪魔のようなマリア
原作を読んだことがないのですが、オペラと較べるとだいぶ内容が違います。
オペラではカルメン1人ですが、この映画でホセが殺すのは5人。
カルメンをめぐって争い、殺人を繰り返していく。
オペラではホセと闘牛士が陰と陽のキャラクターと設定され、
多情なカルメンが華やかな闘牛士に惹かれていくのは止められないと知ったホセが
去ろうとするカルメンを広場で殺しますが、この映画では逆のニュアンス。
教会でカルメンは自分からホセに近づき、キスを交わしながら殺される。このカルメン、多情で犯罪に加担し小悪魔的ですがマリア信仰をもっていて、マリア像の前で
嘘を言ったり冒涜行為をすることを嫌う。他の男と一緒にいる現場にはちあわせになり、
傷ついた表情をするホセを嘲笑したりしない。死体を片付ける時も手伝う。
殺人を犯したホセを追っ手から逃がそうとする。他の男と情事の後でも必ずホセのもとに戻ってくる。
しかし最後の場面、カルメンは
マリア像の前で「愛していない」と(本心?)言ってもホセを突き放すことができず、
今度ばかりは悪魔的知恵で二人で逃走することもできないと悟る。
かつて「子供が欲しい?」とホセに聞いてもいるので、
屈折したものでありながら母性愛にも近いものをホセに感じていたように思います。
命を絶たれマリア像のように横たえられたカルメン。
オペラの有名な曲、「♪恋はあまのじゃく、馴らすことのできない小鳥」は、
「女と猫は呼んだ時に来ず、呼ばない時に来る」というナレーションになっています。
カルメンが求めるのは馴らすことのできない自由な愛。しかしホセを完全に失うことは死を意味した。
オペラ・ファンにも楽しめる作品です。
それでも、愛していました。
「完全無修正版」と聞くと猛烈エロス系のようですが、
むしろ、テーマはオトコの純愛です。
小悪魔な女性に人生を狂わされていく、いわゆる「ファムファタル系」でしょうか。獄中にいる元中尉のホセと、作家のプロスペローの面会から、物語は回想シーンへ。
激情かつ奔放なカルメンと、そんな彼女を盲目的に愛してしまった男の
短い恋が語られます。
カルメンの悲しい過去や、時おり見せる表情から、「実は純粋な両想いだったのでは?」
と匂わせながらも、最も報われない最期へと向かいます。
ラスト、場面は冒頭のシーンに戻りますが、
プロスペローの「あること」を望むか、という問いに対して―――
悲しいかな、男なら誰しもが、ホセと同じく「望まない」と答えてしまうのではないでしょうか・・・。
主演女優のパス・ヴェガが、もーメチャクチャ綺麗ですので、ぜひ見てください