深まった不可思議な愛
デニス・ホッパーが監督の作品。しかし当時(1989年)製作会社が勝手に編集を変えたことに怒ったホッパーがクレジットを拒否、匿名の「アラン・スミシー」名義となってしまった。アメリカでは上映は見送られたとのこと。日本では1991年「ハートに火をつけて」のタイトルで上映。数年後「ハートに火をつけて」のオリジナル・バージョンとして「バックトラック」が出来た。作品の中身の評価に至らないうちに、ゴタゴタやジョディー・フォスターのヌードで有名になってしまった感があるのは残念だが仕方ない。両作品共に殺人事件の目撃者アン(ジョディー・フォスター)と、殺し屋マイロ(デニス・ホッパー)の奇妙な愛の逃避行が描かれていることには間違いない。クライムロード・ムービーというよりラブロマンス。
「バックトラック」はタイトル、編集、音楽全てがデニス・ホッパー流に味付けし直されていた。消えたシーンや復活したシーン、微妙なさじ加減で変化したショット、マイロのサックスの音色、チャーリー・シーンの出演量、などなど見た目の違いもさることながら、一番の違いはマイロのアンに対する愛の形、アンのマイロに対する気持ちの変化過程だろう。「実に不可思議な愛の形」が大きな余韻を残す。
全く同じ材料を手元に置いて、これだけ雰囲気の異なる作品が出来てしまうことに「編集」の魔力を考えさせられる。デニス・ホッパーがここまでこの作品にこだわった理由が理解できた。