白昼夢
絢爛豪華な夢の世界から3年半。本当に本当に待ち焦がれたマーキュリー・レヴの6thアルバム。必要不可欠な因子以外を削ぎ落とした、純度100%のピースから構築される楽曲はどれも圧倒的に美しく、眩暈のするようなサイケデリアを放つ。 前作"All Is Dream"で隙間なく敷き詰められていた壮大なオーケストレーションに変わり、今作では浮遊するシンセ/艶かしいキーボードを基調とした、疾走・浮遊感のあるサウンドスケープが広がる。一方で、一聴して分かるほどに強度を増したジャジーなベースラインが非常に魅力的で、フラフラと彷徨うジョナサンのボーカルと鮮やかな対比を成して響いている。各曲が放出する昂揚指数は半端でなく高く、前作が文字通り「夢の世界の音」だとすると今作はさらにその上、肉体を完全に超越した先で鳴り響く「天国の音」
揺らめくシンセにリヴァーヴがかったフィードバックノイズが覆い被さる導入部から、リスナーを一気に非日常空間へと誘う"Secret Migration"、ジョナサンの妖艶なヴォーカルと絡みつく鍵盤楽器が、螺旋を成しながら上昇していく"Diamonds"、憂いのあるメロと骨太なベース、そしてこれまでライブ以外ではほとんど聴くことのできなかったグラスホッパーの泣きのギターソロまでが登場する"Vermillion"、シンプルな空間に満ち溢れる哀愁の歌が美しい"My Love"など、完璧と言いきってしまえるほどに素晴らしい楽曲が次々と立ち現れる。
近年顕著だった重層的な音作りと比べると、今作はかなりタイトな手触りの作品だと言える。が、そのシンプルさの背後にはこれまでの経年変化がまざまざと感じられ、一見さり気なく配置された音のパーツが混じり合い、化学反応を起こして生み出されるクラクラとするようなサイケデリック度は、これまでの作品の中でも最高レベル。「熟年」という言葉がおよそ似合わない、一つの地点に留まることなく次々と新しい世界をリスナーに提示してくれるマーキュリー・レヴ、やはり最高のアーティストだ。
夢の先へ飛び立つ 澄み切ったサイケデリック
約3年ぶりに届いたマーキュリー・レブの
通算6作目の作品。この澄み切ったような感覚は、どうだ。
神々しいまでに光を感じる音の響き。
ダークな混沌を抜け出たさなぎが
美しく羽を広げ、大空へ飛翔するかのようだ。
スピリチュアルなメタファーでもある
蝶の姿にメタモルフォーゼする
ジャケットが象徴するように
精神世界にまで到達してしまったのだろうか。
そのサウンドは純水のように澄み、
天上へと誘うかのような
陽性のサイケデリック感は
もはや神の領域。
すべては夢といいきった前作。
今作ではさらに、その先へと突き抜けていく
果てなきシンフォニック・サウンド。
彼らにしか出せない世界へ行ってしまった。
残るのは光を放つ鱗粉と
幻想の残響のみ。
とんでもなく素晴らしい作品だ。