ブラッド・ワーク
都会の夜景にジャズが被さるオープニングが昔ながらのオーソドックスな空撮とサウンドで、実に60~70年代的な感覚が心地よい。FBIの凄腕分析官イーストウッドは重度の心臓疾患のため退職。心臓移植を経て隠遁生活を送っていたが、思わぬことから心臓提供者のトラブルを背負い込むことになる。 移植心臓というハンディに老齢が加わってるから大変なヒーローなのだが、意外にも走り、拳銃をぶっ放し、タフな交渉をするイーストウッド。年令を考えたら健気としか言い様のない演技、この歳でこんな役をやるやつぁいない。することなすこと、ほとんどハリ-・キャラハンなのだ。
そうか、ダーティーハリーをやりたかのか。でもいくら動きたくても昔のようには動けない。そこを心臓移植で正当化できる。と考えたかどうか、しかし、移植心臓がパンクするというサスペンスが高まる前に、老衰で倒れそうな主人公に観客が戸惑ってしまうのは計算外だったろう。
展開は快調だし、スコーピオンを思わせている悪党も、イ-ストウッドというより、ドン・シーゲルを彷佛とさせて、そうした懐かしさを感じさせる魅力もある。心臓移植なんて設定にせず、高齢を顧みず現役を通そうとするハリー・キャラハンという線で押したら、この作品はよほど面白くなったに違いない。
良くも悪くもスターが作ったスターの映画。生涯一ダーティー・ハリー、よれよれの裸さらして濡れ場もありだもんなー、なんだかんだ言ったって、結局やったもん勝ち。枯淡の境地なんか行かずにうらやましい歳の取り方。流石ですクリント・イーストウッド。