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第三の男

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第三の男の商品レビュー

5.0 不朽の人間ドラマ
 ミステリー仕立てであるが、‘人間の生き方’が本作のテーマだ。映画という娯楽作品であっても、グレアム・グリーンが脚本を書けば、彼の作家性が主人公の行動に投影するのは自然なことだ。そう見ることによって、ホリー(ジョセフ・コットン)のアリダ・ヴァリとの関係や講演会での失敗の意味がわかる。
 ホリーはハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)の招待で第二次大戦後の荒れたウィーンにやってきた。ハリーが死んだことを知るが、その死に関係がありそうな第三の男を追求するうちに、ハリーの女のアリダ・ヴァリに会って心を引かれる。
 ハリーが悪党であることがわかっても、なお友情と正義の間でこころがゆれる。ホリーは講演会での質問の意味すら理解できなかった三流の小説家である。いわば平凡な男である。その彼が米軍の少佐に協力してハリーを追うことになる。しかし、すすんで正義をつらぬくのではない。そういう羽目におちいったのだった。
 たいていの映画では、よい人はどこまでも良いひとで、勇気のあるひとはいつも英雄的であるが、この作品はそうではない。人間は将棋の駒のような存在でなく生きた人間を描く。並木道での別れの場面も、結果は彼女がかたくなにホリーを拒絶したが、ホリーといっしょに去っていってもよかった。行きつ戻りつするのが人間の姿であり、どちらに転んでもおかしくない。
 事件と戦後風俗、そして人間の弱さと悪と善が、美しい石畳を背景にして、渾然と収められているから傑作なのであり、単にミステリーとして見るならば、ありきたりの作品と言わなければならない。
5.0 既に伝説の名画
 良い映画が全てそうであるように、あまりに有名なこの作品も、とりわけラストシーンが素晴らしい。
落ち葉舞う並木のずっと向こうから足早に歩み来るアリダ・バリ、
ジープに寄りかかって待ち受けるジョセフ・コットン(売れない作家ホリー・マーチィン)、
その傍らを、一顧だにせず昂然と前を向いたまま通り過ぎるバリ、胸を打つチターの音色、・・・
一言の台詞もないこの長いショットが、女と男の気持ちを余韻嫋々に語り尽くす。
既にもう、伝説。
 荒廃したウィーンの街の石畳を舞台に、光と影が交錯するカメラワークは、モノクロール画面による映像美の最高峰である。
オーソン・ウェルズの憎い登場シーン、観覧車の中で語る「ポッポ クロック・・・」の名台詞、そして最後の下水道での追跡劇、
アントン・カラスのチターが全編を彩る、
間違いなく、色あせることのない名画中の名画である。
ちなみにウィーン市民は、我が町の一番荒れ果てた時を活写したこの映画が嫌いなそうな。
5.0 未だ色褪せぬ感動
ジョセフ・コットン, オーソン・ウェルズの迫真の演技。他の登場人物も猫一匹に至るまで印象に残る場面があって、しかも筋がぴんと通っている。
 チターの音楽も効果的。
 ウィーンの雰囲気と合わせて、何度も観たくなる映画でなるほど、人様が名作とこぞっていうだけのことはあると納得です。
 どのシーンも印象に残りますが、特に印象に残るのは、終盤近くかな、あの遊園地のシーン。
 後の007にもオマージュしたシーンが出てきますが、オーソン・ウェルズの微妙な表情とそれを観て迷う主人公の表情の対比が面白いです。悪い奴なんですけど、どこかにくめないんですね。オーソン・ウエルズの役が。色気があるというか。
 あと、ラストの締め方も美しい。これが映画という締め方で唖然としました。
 この映画は何回も見て、宝物になりました。
5.0 酔って下さい
映画に対する専門知識の高い方々が既にレビューを書かれているので、ここではそれを反復するこは避けようと思う。ただ、この映画の雰囲気、演技、演出、全てに酔って下さいとお奨めしたい。古い映画で今も高い評価を得ているもののほとんどが、残念ながらただ古いというだけで高い評価を得ている。好みの問題もあるだろうが「市民ケーン」は演出技術の斬新さで評価されているが、映画としては古さから逃れられていないし、「カサブランカ」などは安っぽいメロドラマとしか思えない。

「第三の男」はその点、古いからいいという映画ではなく、古くなければ駄目な映画なのである。この物語をリメイクすれば、間違いなく失敗するだろう。この物語を現代に移しても間違いなく失敗するだろう。骨董の良さは、単に古いから良いのではなく、それが現代にも通用する、あるいは現代をも圧倒する雰囲気と美を有しているからである。「第三の男」にはそれがある。第二次大戦直後のウィーン、オーソン・ウェルズの存在感、ジョセフ・コットンのユーモア溢れる名演、キャロル・リードの演出、グレアム・グリーンの脚本、ロバート・クラスカーの撮影、そしてあのあまりにも有名なテーマ音楽。これらの要素が奇跡的に結晶し、昇華する。映画は総合芸術であるから全てがそろって名作となるという手本のような映画である。
5.0 白黒撮影の芸術
私たちは、この映画を映画史上の傑作として、そして白黒撮影映画の見本としてさまざまな角度から語ってきたように思う。確かにこの映画ではオーソン・ウエルズの名演や監督・キャロル・リードの名演出のみならず、画面から溢れ出る美しい映像や特に夜の雰囲気等、どこか近寄りがたい不思議な空間が描き出されていることに誰もが驚かされることだろう。

当時のウィーンは米英仏ロの占領化にあった。連合国の爆撃により多くの建物が崩壊しており、大きな傷跡を引きずっていた。そして、その地でハリー・ライムはペニシリンの闇取引で世間に背を向けていて、やがてすべてを知ったキャロウェー少佐により追い詰められることになるのだが、ある意味ハリーは崩壊された過去のウィーンと一心同体だったのかもしれない。

現在でもこの映画のロケ地を訪問することはさほど難しいわけではない、大観覧車、ウィーン墓地、カフェ・モーツァルト等・・・。しかしこの映画で表現された白と黒の情緒を、現在のウィーンに求めることは不可能に近い。それは復興した街並み、そして人々のゆとりによってこの都市にあった情緒がいつしか、ハリーライム同様に失われてしまったことからである。

私たち日本人がこの映画を特に親しみを感じる理由として、このような荒廃していたウィーンに郷愁を感じるからだとも言われるが、私は決してそれだけではないと考える。なぜならば、戦争を知らない、終戦後を知らないあらゆる年代の人々が、この映画に限りない名声を与えていることに他ならないからであり、この映画がまさに白黒撮影の芸術であるからだ。

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